【 願い事 】土方&ヒロイン2
「土方さんって、願い事とかあります?」
とっても暇な昼下がり。
私と土方さんは、街見回りをしながら、ふと思いついた事を話した。
私の唐突の質問に、土方さんは少し眉を上げて、私の事を見てきた。
「なんだ、唐突に。」
「私は一杯ありすぎて、どれから叶えたらいいのか、きっと神様も困っちゃうぐらいなんですよね。」
「・・・だろうな。」
隣で新しいタバコに火を付けると、土方さんは足を止めて、ゆっくりと煙と共に息を吐き捨てた。
タバコを付けるときは、土方さんはいつも風下に移動する。
そんな小さな心使いが、凄くうれしい。
だから、土方さんの願い事で、私が叶えられる事があったら、叶えたいなって思ったのが事の始まり。
私はふと、土方さんの腰についている刀に目を止めた。
「私・・・刀になりたいな。」
「は?」
ポツリと呟いた言葉は、土方さんの耳にしっかりと入っていた。
土方さんは私の額に手をあてて「熱はねぇな。」と呟いていた。
いや、そうじゃなくて・・・。
私が言葉に詰まると、土方さんは少しだけ前に歩いて、また立ち止まった。
私には背中しか見せてくれない。
置いていかないで・・・
こっちを向いて・・・
そんな思いが胸を支配して、私は手を伸ばしかけた。
そこに土方さんの声が聞こえた。
「刀になりたいか・・・分からなくもない。」
へ?
私は手を伸ばしたまま、固まっていると。土方さんは急に振り返った。
そして伸ばされたままの手を取った。
グイ・・・と土方さんの方に引かれると、私は数歩前と強制的に歩かされた。
すると、土方さんは私の腰についている刀を、コンと叩いた。
「刀になれば、いつでもお前の側にいれる。」
「!?」
瞬間、顔から火が出る程に顔が真っ赤になった。
土方さんも同じように顔が真っ赤になっていた。
互いに銅像になったかのように、動かない・・・いや、動けない。
まさか、土方さんも同じ事思ってくれていたなんて。
刀になりたい・・・。
その願いは、いつでもあなたの側にいれるだけじゃない。
あなたの命を守れるから・・・。
そして・・・
あなたが一番気にかけてくれるから。