【新年】 新一×蘭



よし、出来た。
等身大の鏡を前に、私は少しポーズを取ってみた。
今日は新年初めて新一に会う日だからね。
いつもより早めに起きて、今だ寝ているお父さんの朝食&昼食を作って、振り袖を着付け
ていた。
淡い桃色の振り袖は、新一の母親からの誕生日プレゼント。
突然郵送に送られて来た、この荷物。
その中にはカードが一枚。

『新一と初詣にコレ着てね♪』

私は小さな巾着袋を手に持つと、家を後にした。
はき慣れない草履の所為か、いつも以上に歩くの時間がかかる。
しかも疲れるし。
「はぁ。」
私が息を吐き出すと、ポンと誰かに肩を叩かれた。
振り返ってみると、全然知らない男の人が二人。
ニヤニヤとしたその顔つきに、私は少しだけ足を後ろにずらした。
「ねぇね、これから俺らも初詣しちゃうんだけど、一緒に行かない〜?」
「私、約束してますんで。」
そう言って、その場から離れようと思った瞬間。
私の手首は、一人の男の人に捕まえられていた。
イタっ…。
結構キツク握られた手首。
この格好じゃ、自慢の技も披露する事が出来ない。
新一!!
「いててててっ!」
突然、私の腕を掴んでない方の男がうなり声を上げた。
「その汚い手を離せよ。」
私が顔を上げれば、新一の怒った顔。
さらにその男の腕を後ろ手に引き上げた。
「お、折れる!」
「だろーな。」
平然と言ってのける新一。
「どーすんだ?新年早々、病院に世話になりてぇーか?」
チラリと私の手を握っている男に視線を移せば、男は冷や汗を浮かべてゆっくりと私の手を離した。
思った通り、手首が赤くなってる。
私が手を新一に見えないように隠すと、男達は走って逃げて行ってしまった。
「ごめん、新一。ありがとう。」
今だブス!とした顔のままの新一。
「ったく、バーロー。俺が迎えに行くまで待ってれば良かったのによ。」
「だって、新一の事だから、まだ寝てると思って、起こしに行こうと思ったんだもん。」
新一は近づくと、そっと私の手首を持ち上げた。
「大丈夫か?」
「う、うん。」
そう言うと、そのまま新一は私の手を繋いで歩き始めた。
瞬間に顔が真っ赤に染め上がる。
新一も後ろから見ればわかるくらいに耳が真っ赤になっていた。
「新一?」
「おっおめーは、危なかっしーからな。園子達も待ってんだろ?行くぞ。」
「うん!」
私がそっと手に力を込めれば、前を向いたままの新一の手にも、お返しのように、そっと
力が込められた。
新一、今年もよろしくね。



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