【 新年 】蔵馬×ぼたん


「これで、盛りつけは終りね。ごめんなさいね、ぼたんちゃんにまで手伝わしてしまって。」
「いいえ〜暇でしたから気にしないでくださいな。」
申し訳なさそうに言う母さん。
今日は、2007年の最後の日、大晦日。
本当はぼたんと街にでも買い物に行こうと思っていたのだが、ぼたんにそれは却下されて
しまった。
それと言うのも「大晦日ってのは女にとっては大仕事なんだよ、蔵馬。」といたく真剣に
物を言うから、大晦日は会えないのかと思っていたら・・・。
ちゃっかり、ぼたんは母さんの正月の用意を手伝っていた。
俺はそんな二人を居間のソファーで本を読みながら、チラチラとほのぼのした雰囲気を見
ていた。
母さんとぼたんなら、嫁姑問題ってのはなさそうだな。
それにしても「暇」ってどう言う事でしょうね。
俺の事ほったらかしておいて、その言葉。
少し、お仕置きが必要かな?
「くら…じゃなかった、秀一。」
また、蔵馬と言いそうになりましたね。
何度言っても、ぼたんは・・・。
ピョンとソファーの前に膝をついて顔を覗きこむぼたん。
ニッコリと笑った笑みがすごくかわいいから、許しましょう。
「なんですか?ぼたん。」
やっと母さんから解放されるのかと、思いきや…
「幽助達が、初日の出見に行こうって言ってたんだけど、どうする?」
「幽助が?別に俺は構いませんけど?」
「じゃ、決まりだね♪悪いけど、幽助に連絡しておいてくれよ♪」
それだけ言うと、またぼたんは母さんの所へと行ってしまった。
仲むつまじいのは良い事なんですが・・・ここまで放っておかれるのも、どうなんでしょ
うか?
俺はため息をつきながら、二階の自分の部屋へと向かった。
机の上の携帯を手に取ろうとした時、ベットの脇に置いてあったぼたんの荷物が視界に入
った。
今日は、泊まるんでしたね。
俺はそのままぼたんの荷物に近づいて、優しく荷物を撫でた。
本来なら、ぼたんにこうしてるハズでしたが。
そんな苦笑を浮かべても、あの母さんとぼたんの楽しそうな雰囲気を壊す事なんか出来な
い。
蔵馬は携帯を手に取ると、かけ慣れた幽助へと電話した。
「おう、蔵馬。ぼたんはもうコッチに来てんのか?」
「ええ、俺の家で正月の用意をしてますよ、母さんと一緒に。」
「うへぇ〜おめーらもう結婚しちまえ!!」
幽助のそんな言葉に俺は苦笑するしかなかった。
したいのは山々なんですけどね。
色々とそれには問題がついてくるんですよ、色々と。
ふとぼたんの上司の顔が頭に思い浮かんだ。
次ぎに思い浮かぶのは、飛影の顔。
「はぁ。」
知らずにため息をついていた。
「なんだ?随分と疲れてんなぁ、蔵馬。で、今日の初日の出はどうよ?おめーらも来るだろ?」
「今日じゃなくて、明日のですけどね。ええ、ぼたんも楽しみにしてるようなので、俺も
行きますよ。」
「…オメーよ、それってぼたんが行かなけりゃ、行きませんって言ってるようなもんだろ?」
「あれ?そのつもりでしたけど?」
「…八つ当たりは辞めろよなぁ。俺だって蛍子に邪魔だって言われて、外ブラブラしてん
だからよ。」
どこの家も同じようか。
俺はふっと笑みを作ると、22時に幽助の家に集合する事を聞いてから、電話を切った。
また、楽しそうなぼたんの声。
俺はベットに横になって、そんな微かに聞こえるぼたんの声を聞きながら、夢へと落ちて行った。

「蔵馬、蔵馬ってば、蔵馬。」
うっすらと目を開けるとそこには着飾ったぼたんの姿。
淡い桃色の着物に、ぼたんの柄があしらわれている振り袖。
髪もいつものようなポニーテールじゃなくて、しっかりと結わえていた。
「随分寝ていたみたいだねぇ、そろそろ幽助達の所に行く時間だよ。」
そう言って、ぼたんは俺の頬を軽く突いてきた。
俺は起きあがると同時にぼたんの手を自分の方へと引いた。
自然と俺の胸に入ってくるぼたんをギュっと抱きしめた。
やっと、触れられた・・・もう限界だった。
ぼたんの匂いがする。
俺はぼたんの肩に顔をうずめた。
「蔵馬、お正月の準備ね、楽しかったよ。」
「それは良かったです。母さんも助かったんじゃないかな?」
「でも・・・。」
そう言って、ぼたんは俺の事を見上げてきた。
少し頬が赤いのは気のせいじゃないだろう。
「でも、寂しかった。」
そう言うと、ぼたんはポスンと俺の胸に顔を付けてきた。
ぼたん・・・
俺はギュッとぼたんを抱きしめた。
チャッチャラッチャ〜♪
ディスプレイ画面には「幽助」の文字。
俺とぼたんは見合ってから笑ってしまった。
電話を出れば、すでに出来上がってる幽助と桑原君の声。
「行きますか。」
「うん!あそうだ、蔵馬…今年一年、お世話になりました。来年もお世話になります。」
「俺こそ、これから先ずっと、世話しますよ。」
「なんだい、それは。」
ニッコリと笑みを向ければ、ぼたんの花のように染め上げた可愛らしい顔が見れた。


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