【 新年 】乱馬×あかね あかね編


パンパン!!

どうか神様、今年こそ・・・

ふと目を開けると、乱馬がこっちをニヤニヤした顔して見ていた。
「何よ。」
「なーに、熱心にお願いしてたのかと思ってよ♪」
「別に、あんたに言う必要ないでしょ。」
怒濤のように押し寄せてくる、参拝者の波。
私はフイと乱馬から顔をそらして、参拝が終わった人の波へと向かった。
早乙女の叔母様から「もう着れないから」と理由で頂いた振り袖。
今日は、ソレを着て家族とそして乱馬と一緒に初詣に着ていた。
だが、参拝した頃にはお父さん達とははぐれてしまい、隣には乱馬のみ。
これだけ沢山の人でも、私の周りには常にちょっとした空間が作られてた。
私よりも少し前を歩く乱馬。
乱馬は草履を履いてる為にいつもより遅く歩く、私に合わせて歩調もゆったりとしていた。
もちろん、この空間があるのも、乱馬のおかげ。
その為に、着崩れする事もない。
私はクイクイと乱馬の袖を引っ張った。
「んー?なんだ?」
「ねぇ、乱馬。おみくじ、しようーよ。」
そう言って、長蛇の列を作っているおみくじを指さした。
乱馬はあからさまに「うげ。」って顔でおみくじの列を見つめた。
「おみくじなんて、ただの紙切れじゃねーか。」
「何言ってのよ。ここのおみくじ、すっごく良く当たるって有名なんだから。」
「そんな紙切れ一枚に自分の人生左右されたくねーけどな、俺は。」
とかなんとか言いながらも、乱馬はおみくじ売り場の列に並んでくれた。
紙切れ一枚って・・・別にいいじゃないのよ。
そんな一枚でも切なる願いってのがあるんだから。
私はふとおみくじ売り場の看板を見つめた。
『恋みくじ』『普通みくじ』100円
『縁みくじ』200円
私はお財布から200円を取り出した。
すると乱馬はそんな私の手から、100円を持って行った。
「お、サンキュ〜♪」
へ?
私は目が点になって、乱馬の事を見上げてしまった。
私が引こうとしていたのは『縁みくじ』。
でも乱馬は、私が普通みくじを引くと思ってるようだった。
なんだかんだ言いながらも「俺なら大吉に間違いないな。」とニコニコしながらおみくじ
の順番待ちをしてる。
「あかねは凶に違いねぇぞ。」
「明日よ。」
「ちげーよ、キョウだ!」
「だから、明日だって言ってんでしょうが。」
フイと顔を背けると、なびきお姉ちゃんの姿。
隣には、久能先輩の姿。
私が見つけたと同時に、乱馬もそれを目撃したのか、乱馬は私の頭をグイと下げさせた。
「隠れろ、あかね!!」
「ちょっと!」
頭を上げようとしても、乱馬もその場で頭を低くして、なびきお姉ちゃん達が通り過ぎるのを待っていた。
「ふ〜なんとか行ったか。」
「ちょっと痛いじゃないの!」
「しょーがねーだろ。久能の野郎になんか元旦早々会いたくねぇーっての。」
ブチブチと文句を言う乱馬。
確かに、この人混みの中だろうと「天道あかね、好きだぁ!」とか言って突進してきそうだし。
私はフゥと息を吐き出した。
数分待って、私たちの順番に回ってくると、乱馬はチラリと私の方を向いた。
「なぁ、あかね。恋みくじと普通みくじの違いってなんだ?」
「あんたバッカじゃないの?恋みくじってのは恋愛占いみたいなの。普通のは全般よ。」
「ふーん、あかねはどっちにすんだ?」
私・・・?
私はチラリと縁みくじの方に視線を移した。
「コレはおめぇーには必要ねぇからな。」
そう言うと、『縁みくじ』と書かれたおみくじを手に取っていた。
本当は、乱馬との関係がどうなるのか・・・縁はどうなってるのか知りたくて、
200円用意したのに、乱馬が横から取ったから、私の手元には100円。
もう一度お財布から出せば問題なかったんだけど・・・。
なんで私には縁みくじが必要ないのよ。
まさか縁がないなんて言うんじゃないでしょうね!
「俺たちだったら、恋みくじする必要もねぇーし、やっぱ、コッチか。」
「え?」
そう言うと乱馬は、私の手からも100円を取って、巫女さんへと渡していた。
「ほら、あかねから先にやれよ。」
そう言われて、手渡されたのは『普通みくじ』
はぁ・・・縁みくじはまた後日でいいや。
私は乱馬からおみくじを受け取ると、カシャカシャと回して棒が一本出てきた。
「20番です。」
「あ、俺49番。」
巫女さんからおみくじの紙を受け取って、私たちは列から少し離れた。
「じゃ、せーので開くぞ。せーのっ!」
あかね『大吉』
乱馬『吉』
やったぁ!!
どれどれ?恋愛は大就!待てば幸の頼りあり。
チラリと乱馬を見れば、私の方が大吉だった為かしょんぼりとしていた。
まったく、子供なんだから。
「乱馬、読んだの?乱馬の見せてよ。」
「別に、読む項目がねーもん。」
ポイと私の手の中におみくじを置いていく乱馬。
「おめーが持っててくれよ。」
「ちょっと!」
ふと恋愛の所を見れば『そのまま行けばよし』と書かれていた。
私の大吉と乱馬の吉を一緒に折りたたんでお財布の中へと入れた。
そんな私の行動を横目で見ていた乱馬は、スッと私の手を握って来た。
「帰ろうぜ、あかね。」
「でも、お父さん達が。」
「どーせ、帰る家は一緒なんだから、心配ねーって。」
そうだよね、少しくらい乱馬とこうしていても。
私が軽く握り返すと、乱馬はふと私の顔を見て、優しく微笑んでくれた。
そして、お返しとばかりにギュッと手を握り返してくれた。
お互い無言のまま鳥居の所まで行けば・・・目の前にはシャンプー・右京・小太刀・ムー
ス・久能・良牙の姿。
『乱馬っ!!!』
全員がそれぞれの思いで乱馬の名前を口にする。
「あかね、ひとまず逃げるぞ!」
「うん!」
乱馬はとっさにあかねを横抱きにして、木へととび移り、屋根へと飛び移った。
「おめーら、あかねの着物が着崩れるだろーがっ!!!いー加減にしろぉぉ!!」
え?
私は瞬間、顔を赤くした。
「正月くれー、俺たちをゆっくりさせてくれぇぇぇぇ!!!!」
お、俺たち!?
それって、私もって事よね?
チラリと乱馬を見上げれば、乱馬は「舌、噛むなよ。」と小さく囁いてくれた。
『乱馬、まてぇ!!!』
乱馬の悲痛な叫び声と乱馬を追ってくる人たちの声が町内中に響き渡っていた。


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