【 新年 】乱馬×あかね 乱馬編


パンパン!!

どうか神様、今年こそ・・・

ふと目を開けると、あかねが熱心にまだ神頼みしてるのが見えた。
何をそんなに熱心にお願いしてるのやら…気が付くと俺はニヤニヤした顔であかねの事を
見ていた。
そんな俺の表情が、あかねの中ではバカにされたと思ったらしい。

「何よ。」

ジロっと睨んでくるあかね。
お袋のお下がりの振り袖つーもんを着てるから、いつも以上にあかねが可愛く見える。
初詣に行くときも、実は一喧嘩したばかりだった。
振り袖を着たあかねに対して「混むのに、面倒な格好して」と言って、怒らせてしまった
のだが、原因。
だが、本音はあまりにかわいいあかねを色々な男の目にさらしたくなかっただけだった。
おふくろはすぐにその訳が分かったのか、「照れてるのよ」なんてフォローしてくれらか
ら、喧嘩は収まったのだが。

「なーに、熱心にお願いしてたのかと思ってよ♪」
「別に、あんたに言う必要ないでしょ。」

プイと顔を背けるそんな仕草すら、ドキッとする。
俺は怒濤のように押し寄せてくる、参拝者の波をかき分けて、参拝が終わった人の波へと
向かった。
気が付けば、親父達の姿が見えねーし。
ま、大方わざと俺とあかねを二人にしたんだろうーとは想像つくけどな。
親父達の考えそうな事だ。
それにしても、本当にすげぇ人だよなぁ。
あかねの着物が着崩れしたらどうしてくれんだよ!
俺は少しでもあかねの間に空間が出来るように、人混みをかき分けいた。
チラリとあかねを見れば、出て来た時と同じ。
よしよし、このままの速度で歩けば、大丈夫そうだな。
ふと前を向けば、誰かに袖を引っ張られる感覚。
袖を見れば、あかねが俺の袖を持って、見上げていた。

「んー?なんだ?」
「ねぇ、乱馬。おみくじ、しようーよ。」

そう言って、あかねは長蛇の列を作っているおみくじを指さした。
うげ・・・。
なんだよ、あの長蛇の列。
こんなのに本当に並ぶ気かよ・・・。

「おみくじなんて、ただの紙切れじゃねーか。」
「何言ってのよ。ここのおみくじ、すっごく良く当たるって有名なんだから。」
「そんな紙切れ一枚に自分の人生左右されたくねーけどな、俺は。」

ったく、しょうがねーな。
俺はなんとか人混みをかき分けて、おみくじ売り場の最後尾へとついた。
ここは、ロープで囲ってあるだけあって、参拝のようなもみくちゃにならない。
俺は肩の力を一気に抜いて、息を吐き出した。
それにしても、どうして女って奴は、おみくじとか占いとか、そう言うくだらないもんに
金をかけられるのかな?
俺はふいとおみくじの看板を見上げた。

『恋みくじ』『普通みくじ』100円
『縁みくじ』200円

って、縁みくじ!?
縁みくじって、ご縁があるとかそんなんか?
ふいとあかねを見れば、200円の用意をしてるあかね。
冗談じゃねーぜ。
こんな事で運命決められてたまっかよ。
俺はあかねの手からヒョイと100円を奪った。

「お、サンキュ〜♪」

案の定、あかねはキョトンとした目を俺の事を見ていた。
やべ、怒られるかな?
話をそらさねば。

「俺なら大吉に間違いないな。」

ニコニコしながら、腕を回せば、今だにあかねは手の中の100円をジッと見つめていた。
オイオイ、マジでやる気かよ
そうはいかねーぜ。

「あかねは凶に違いねぇぞ。」

するとあかねは少しだけ上目使いで睨んできた。

「明日よ。」

はぁ?
なんでいきなり親父ギャグなんだよ・・・。

「ちげーよ、キョウだ!」
「だから、明日だって言ってんでしょうが。」

俺とあかねはまたもや喧嘩になりそうになった。
ゾクゾクゾク。
背中に悪寒。
俺はフイと後ろの方を見た。
そこには、なびきの姿。
しかも隣には、久能の野郎の姿。
やべぇ。
こんなあかねの姿を見たら、久能の事だから、ぜってぇ向かってくる。
そしたら初詣所じゃなくなるぜ。

「隠れろ、あかね!!」
「ちょっと!」

俺はあかねの頭を手で押さえて、人の中へとしゃがみこませた。
グイグイと頭を上げようとするあかねを俺は無理矢理に下へと向かせた。
息を殺して、なんとかなびき達が行くのを確認すると、はぁ〜と息を吐き出した。

「ふ〜なんとか行ったか。」
「ちょっと痛いじゃないの!」

その言葉であかねが俺の手をはねのけて、顔を上げた。
俺はプイと顔をそむけた。
ったく、久能の野郎の魔の手から救ってやったってのに、お礼の一つでも言えねぇーのか
よ、かわいくねー女だな。

「しょーがねーだろ。久能の野郎になんか元旦早々会いたくねぇーっての。」

まだ、あかねは文句を言いたそうだったが、ちらりとなびきが行ったであろう方向を向くと、ためいきをついていた。
数分待って、俺たちの順番に回ってきた。
あかねはどっちを引くんだ?
それにしても、恋みくじと普通みくじってどんな違いがあんだよ。
気になって、俺はチラリとあかねの方を向いた。

「なぁ、あかね。恋みくじと普通みくじの違いってなんだ?」
「あんたバッカじゃないの?恋みくじってのは恋愛占いみたいなの。普通のは全般よ。」

恋愛占いか・・・。
あかねならコッチをやりそうな気もすんなぁ。
なるべくなら、そう言うのはやって欲しくねぇーんだよな。
結果によっては、コイツすげぇ落ち込むし。

「ふーん、あかねはどっちにすんだ?」

俺がそう聞くと、あかねは縁みくじの方に視線を移した。
お、おいおい。
まだ諦めてねぇーのかよ。
俺は咄嗟に縁みくじの方を手に取った。

「コレはおめぇーには必要ねぇからな。」

最初はジッとおみくじを見ていたあかね。
何を思ったのが、だんだんと顔に怒り色が見えてきた。
こいつ、また誤解してやがる。
はぁ。
今日は正月だからな、特別に俺から折れてやるよ。

「俺たちだったら、恋みくじする必要もねぇーし、やっぱ、コッチか。」
「え?」

そう言うと俺は、半ば強引にあかねの手から100円を取って、巫女さんへと渡していた。

「普通みくじ、二人分で。」
「どうぞ。」

そう言われて差し出された普通みくじ。
俺はあかねへと手渡した。

「ほら、あかねから先にやれよ。」

まだ、チラリと縁みくじを見つめるあかね。
本当にシツコイ奴だな。
縁みくじなんかする必要ねぇーって言ってんのに、あかねの奴。
あかねは俺からおみくじを受け取ると、カシャカシャと回して棒が一本出てきた。

「20番です。」

続いて俺も振って棒が一本出てきた。

「あ、俺49番。」

巫女さんからおみくじの紙を受け取って、俺たちは列から少し離れた。

「じゃ、せーので開くぞ。せーのっ!」

乱馬『吉』
あかね『大吉』

ゲゲ・・・なんで俺が吉なんだよ。
チラリとあかねを見れば、それは嬉しそうなあかねの顔。
ま、いっか。
あかねの笑顔見れたしな。
俺はふと恋愛の所を目を通した。
『そのまま行けばよし。』
ふーん、良しって事は、少しは俺たちの仲も進展すんのかなぁ?
ふとそんな嬉しい事を考えたが、隣のあかねに視線を配らせて、再び肩をガックリと落と
した。
俺とあかねじゃ、まだまだ先は遠い・・・よな、やっぱ。
はぁ。

「乱馬、読んだの?乱馬の見せてよ。」

ヒョイと背伸びして俺の手元にあるおみくじをみようとあかねが近寄ってきた。
フワリと薫るあかねの香りに、俺は心なしか鼓動が早くなった。

「別に、読む項目がねーもん。」

俺は興味がないように、ポイとあかねの手の中におみくじを置いた。

「おめーが持っててくれよ。」
「ちょっと!」

あかねの見たい気もするけど…こんな紙切れに人生左右されたくねぇってのは本音。
どんな事が書かれていても、俺はあかねの事・・・。
あかねは俺のおみくじを軽く見てから、そのままあかねの大吉と共に抱き合わせるように
織り込んで、お財布の中へと入れていた。
まぁ、今日はお正月だし。
人混みが凄いから、なんとか言い訳も出来るし。
周りを素早く確認しても、見知ってる顔はねぇ。
そんなあかねの幸せそうな顔見てたら、無性にあかねに触りたくなった。
よし。
俺は、スッとあかねの手を握って来た。

「帰ろうぜ、あかね。」

一瞬驚いたような表情を見せたあかねだったが、なんとか手は離されずに済んだ。
ほ。

「でも、お父さん達が。」

ここまで来て、親父達の心配かよ。
コイツ、わざと俺と二人になったの気づいてねーんだな。
ったく。

「どーせ、帰る家は一緒なんだから、心配ねーって。」

そう言って、前を向いて歩こうとしたら、キュッとあかねの方から握ってる手に少しだけ
力を入れて来た。
え・・・。
ふと見れば、あかねがかわいく、幸せそうな笑みを浮かべていた。
か、かわいい。
俺も自然と笑みを向けると、離したくねぇって気持ちで、ギュッと握り返した。
お互い無言のまま鳥居の所まで行けば・・・目の前にはシャンプー・右京・小太刀・ムー
ス・久能・良牙の姿。

「げっ!?おめーら!!!」
『乱馬っ!!!』

全員がそれぞれの思いで俺の名前を口にする。
が、全員が殺気だってるのは間違いなかった。
このままじゃ、あかねが・・・しゃーねェ!

「あかね、ひとまず逃げるぞ!」
「うん!」

俺はとっさにあかねを横抱きにして、木へととび移り、屋根へと飛び移った。
ったく、あのバカ共、
てめぇーの事しか考えてねーんだからよ!!!

「おめーら、あかねの着物が着崩れるだろーがっ!!!いー加減にしろぉぉ!!」

俺の中にいたあかねが瞬間、顔を赤くした。

「正月くれー、俺たちをゆっくりさせてくれぇぇぇぇ!!!!」

お、俺たち!?
やべぇ、思わず本音がっっ、今はそんな事言ってる場合じゃねぇーよな。
ともかく奴らを撒かねーと!ゆっくりあかねと話をする事も出来ねぇぜ!
チラリとあかねが俺を見上げれば、俺は「舌、噛むなよ。」と小さく囁いた。

『乱馬、まてぇ!!!』

俺の悲痛な叫び声と俺を追ってくる人たちの声が町内中に響き渡っていた。


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