【 新年 】蔵馬×ぼたん 2
「あけまして、おめでとう。ぼたん。」
「おめでとうさん、蔵馬。」
今日は蔵馬から誘われて、初詣に行く事になった。
いつもは着物を着るんだけど、今日は蔵馬がクリスマスに買ってくれたスカートで行く事
に。
「それ、俺のあげた服ですよね?よく似合ってますよ。」
「そうだろ?ピッタリなんだよ。それにしてもよく私の服のサイズがわかったねぇ。」
ニッコリと微笑んで蔵馬は嬉しそうに私の事を見ていた。
だが、直後蔵馬は私の腰をグイと引き寄せて、耳元に口を寄せてきた。
「知ってますか?ぼたん。男が女性に服をあげる理由は、その服を脱がせたいって印。女
性が送られた服を身につけるのは、脱がしてくださいって事だって。」
最後にチロリと耳を嘗められて、私の顔は真っ赤になった。
咄嗟に蔵馬から離れて耳を押さえると、蔵馬は何もなかったかのようにさわやかな笑みを浮かべていた。
だが、言った言葉は・・・
「嬉しいですよ、ぼたんがそんな意思表示してくれるなんて。今日は、俺、頑張りますね。」おいおい、何を頑張るのだ蔵馬君。
ぼたんは全身から冷や汗が流れ出た。
それこそ、蛇に睨まれた蛙。
もとい、狐に睨まれた鼠ってな所だろう。
「べべべべ別に、そう言うつもりじゃぁ!」
「ささっ!とっと初詣なんか終わらせてしまいましょうね。」
何故かさっきよりも蔵馬の機嫌はすこぶる良い。
それはスキップでもしだしそうな勢いだ。
まったくもってぼたんの言葉は耳に入ってない。
ど、どーしよう。
洋服ってそんな意味があるなんて知らなかったよぉ。
そりゃ、確かに・・・いつかは蔵馬とって・・・ゴニョゴニョ
でも、まだ心の準備が出来てないって言うか、なんと言うか・・・
私がモンモンと考えていると、蔵馬はプ!と笑い出した。
「はははは。」
一瞬、何が起きたんだかわからなかった。
だが、あまりにも蔵馬がお腹を抱えて笑っているものだから、なんとなくムッ!としてしまった。
「何が可笑しいのさ、蔵馬!」
「いえ・・・その・・・ふふふふ・・・すみません。ぼたんがあまりにも真剣になってるから。つい。」
まだ笑いが収まらない蔵馬を睨みつつ、私は蔵馬に背を向けた。
「からかったのかい!失礼しちゃうね!」
「すみません。あまりにもぼたんがかわいくて、虐めたくなっちゃいました。」
そう言われて、私は頬をプウと膨らました。
蔵馬はそっと私の手を取ると、先程までの笑いを治めて、ニッコリと笑みを向けていた。
「確かに、俺も男ですからね、そう言う事考えないって言えば、嘘になりますけど。」
けど?
私は少し潤んだ瞳で蔵馬の事を見上げた。
すると蔵馬は困ったような顔になった。
「あなたも悪いんですよ?そうやって俺の前で無防備な顔をするから。」
そう言われた瞬間、私の目の前が真っ暗になった。
蔵馬の手が離れて、私の瞳を覆った。
その瞬間、唇に暖かい物・・・。
視界に明るさが取り戻されると、蔵馬はにっこりと笑みを向けていた。
「今年、初キスです。」
「な!?」
こ、こ、こ、こ、ここ、外じゃないかい!
私はゆでタコのように顔が真っ赤になった。
「ぼたん、顔が真っ赤ですよ。」
「だ、誰の所為でこうなったって言うんだい!」
「俺ですね。」
サラっと言うと、蔵馬はぼたんの手を取って歩き出した。
「ぼたん。」
「なんだい?」
「俺、我慢強い方ですけど・・・。」
すると蔵馬の声が、フッと変わった。
それはいつも以上に低く囁くような声。
だけど、どこが面白がってるような・・・そんな声色で。
「あんまり無防備すぎると昔の血が騒ぎだしちゃいますからね♪」
へ?
一瞬、妖狐のような鋭く妖しい眼光。
私の頭は真っ白。
蔵馬に手を引きずられて、お参りした事すら記憶からなくなっていた。
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