タイトル 「 俺と・・・ 」



SS






「俺と一緒に来るか?」

蘭はその場から足が動かなかった。
後ろには、コナン。
前にはキッド。
蘭の瞬時の迷いを、キッドは最初から見透かしていたように笑みを向けた。


「俺と一緒に来る意味・・・わかってんのか?」
「キッド。」
「後戻りは出来ねぇーんだぜ。ちゃんと気持ちの整理を付けてきな。」

言った瞬間に、キッドはコナンへと視線を向けた。
それは、探偵への尊敬の眼差しとかではなく、ただ一人の男としての
嫉妬の視線だった。
それに気付かないコナンではない。

ジッとコナンをにらみ付けるように、見つめたキッドは、ゆっくりと蘭の事を
見つめた。


「工藤新一が羨ましいよ。」
「え?」


その瞬間、コナンは走り出していた。
それを視界に納めていたキッドは、鮮やかにその場からハングライダーで逃亡して
しまった。
淡い月明かりの中、滑空するキッド。

「くそっ!!蘭姉ちゃん、どこも・・・!!!」

蘭の顔を見て、コナンの表情が変わった。
それが先程のキッドと同じだと気付いた蘭は、慌てて頬を隠した。

「大丈夫よ、ちょっとかすっただけだから。もう血も止まってるし。」


蘭の手をそっとどけると、コナンの小さな手が、傷口を優しく撫でた。


「蘭姉ちゃん、遅くなってごめんね。新一兄ちゃんが、絶対にココだからって。
新一兄ちゃんが蘭姉ちゃんの事、見つけてくれたんだよ?」
「うん、ありがとう。新一にも、後で連絡しておく。」

コナンの頭を優しく撫でると、蘭は立ち上がった。
今はもう見えない、キッドの姿を見つめるその視線。
蘭の視線に、コナンの胸の内は不安な風が吹き荒れた。


「仕掛けは上場」



キッドの言葉が脳裏から離れない。


コナンは、蘭の手に自分の手を握りしめた。
新一なら・・・
蘭の手は小さいから、包み込めたのに。
今の俺には、包み混む事が出来ない。







絶対に盗ませない。



絶対に盗む。




他の何を犠牲にしても、蘭だけは・・・




蘭だけは・・・・



諦められない。



もう気持ちは、戻れない所まで来てしまってる。



俺も



怪盗キッドも



快斗も








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マスター 冬牙