タイトル 「 おや、見つかってしまいましたね。 」

〜 コナンに見つけられてしまったバージョン 〜


「蘭姉ーちゃん!!!!」
「コナン君!?」

ヤッバ

とっさに左目を手のひらで隠して、蘭の前へと立った。
それ以上、こちらに来られても困る。
それ故に自ら、名探偵へ向かって近づいた。

「てめぇ、キッド!!!蘭姉ーちゃんを返せ!!!」
「おやおや…見つかってしまいましたね。」

さて、どうしたものか。
今すぐにでも飛びかかりたい、今は小学生の工藤新一。
このまま遊んでも面白いのだが。
今日は、蘭から嬉しい言葉を聞いて、すごく気分が良い。
だから。

「二人の揺らめく時間を邪魔するとは、随分と無粋な事をしますね、名探偵君。」
「何が、揺らめく時間だ!!!ふざけんなよ!!!」
「別にふざけているつもりはありませんよ。ですが、この夏日。私も少々言い争いをする程の気力はありませんからね。」

そう言いながら、コナンに背を向けた。
すぐに麻酔銃を構える気配がする。

だけど、それは驚いてる蘭の顔を見るだけでもわかるもので。
ついつい、怪盗キッドの仮面を脱いで、蘭にニッコリと笑みを浮かべてしまった。

ゆっくりと蘭に近づくと、蘭も俺に向かって走り寄ってきた。
パチンと蘭の目の前で指を鳴らせば、蘭の上にあった帽子と、右目にはめていたモノクルは、あるべき場所へと収まる。
蘭は、コナンから死角になるように、俺の影へと少しだけ移動した。

「だ・い・じょう・ぶ?」

声を出さずに、口だけで形をつくる蘭に、いつものようにウィンクして小さく頷いた。
ごめんな、蘭。

心で謝りながらも、蘭の腰をぐいっっと強引に引いた。
無論、蘭は簡単に俺の胸に包まれる。

「あとでな。」

耳元で一瞬囁けば、蘭を抱えて、コナンの方を向いた。

「蘭姉ーちゃん!!」
「名探偵君、怪盗は一度目につけたお宝は決して諦めないんだぜ?」
「なんだと!?」
「せいぜい、盗まれないようにな。」

ポンと軽く蘭の背中を押す。
瞬間に、蘭はコナンに向かって倒れ込んだ。

「蘭姉ーちゃん!!」

案の定、コナンはとっさに蘭を支えた。
それを見て、蘭に怪我のない事を目の端で確認してから、そのままパチンと指を鳴らした。
コナンと蘭の周りに煙幕がはられる。

「あばよ!名探偵!」

コナンは気付いた時には、すでに怪盗キッドは、白い翼を身につけて空の上だった。


コナンに守られるようにいる蘭を見て、唇を噛みしめた。
こんな短い時間でも、工藤新一に蘭を任せたくないって思うほどに、気持ちは膨らんでいる。


ほんとに、しゃーねぇな・・・。


そのまま空を舞い上がり、今夜どうやって蘭の所に行こうか、考える楽しみが出来たと、口もとを上げた怪盗キッドだった。




FIN







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マスター 冬 牙