あなたの初めては私のモノ





「ほう、あの男がそこまでするとはのう…たまには、マシな事もするではないか。」

呆れたような、それでも少し嬉しそうな表情するビバルディ。
今は夕方。
ハートの女王様から直々のご招待のティーパーティに参加していた。
その時に、ビバルディがどうして私がこの世界に残ったのかが聞きたいと、ねだってきた。
最初は言うつもりなかった。


だって、あんな甘くも何もない、怒鳴り合いのしかもプロポーズなんて、言いたくない。


妻にすると宣言しただけで、「結婚してほしい」と言った言葉は建前だと言い切った
あんな言葉など・・・二度と思い出したくなかった。
ブラッドは宣言通りに私をこの世界へと止め、結婚式まであげてしまった。
とは言え、神父の前でも宣誓は私はしていない。
ブラッドが二人分答えてしまったからだ。
だから、私は神には誓っていない・・・と言うのはおかしいのだろうか?

「マシなもんですか。まったく、人生一度きりの結婚をなんだと思ってるのかしら。」
「一度きりだと思っているのではないか?アレなりにな。」

ビバルディからブラッドをかばうような、珍しい発言に、アリスは眼を丸くした。
いつもブラッドをこれでもかって言う程にこけ落とすと言うのに・・・。
意外と顔全体に描いて、ビバルディを見ていた、アリス。
そんなアリスに気がついたビバルディはニッコリと妖艶な笑みを浮かべた。

「もし、アレが浮気でもしようものなら、即刻首を跳ねてやるから、安心するがよい。」

それは早くそんな日が来る事を祈ってるようにも見える。
アリスはゾクリと背中に悪寒が走った。
もしも、私がそんな事でここに駆け込んだら、確実に全面戦争になるだろう。
なんとなくわかる気がする。
ビバルディはやると言ったらやる女性だし、(そこが尊敬してるんだけど)ブラッドもた
だじゃ、やられるわけもないだろうし。
何時間でも、やり合っていそうな気がする。
そんな恐ろしい事になんか出来ない。
アリスは、ゴクリと紅茶を喉の奥へと流し込んだ。

「さて、そろそろ帰るわ。」
「おや、まだ良いではないか。それともアレは、女同士の語らいも許せない程器量の狭い
奴なのか?」

そんなことない・・・
ああ、否定が出来たらどんなにいいだろう。
だが現実は違う。
ビバルディに会う事への許可はもらってる。
だが、すぐに戻るようにと言われている。
しかも紅茶のおかわりも4杯までと決められている。
4杯飲んだら、そのお茶会が続いていようが、何だろうが戻ってくるように。
それが私とブラッドとのルールになっていた。
そんなルールに気がついているのか、ビバルディはフンと茶器を指ではじいた。

「わらわが気がついてないと思ったか?いつも4杯で帰る事を。」
「ごめんね、ビバルディ。ルールで。」
「だから器量が狭いと言っているのだ。わらわなら…。」

そう言ったビバルディの表情が一転する。
眉間にしわを寄せ、心底いやそうな表情を見せた。

「ビバルディ?」

わけがわからないように、首をかしげると共に、カチリ・・・と背中で音がした。
ゆっくりと後ろをむくと、そこにいるのはブラッド。
いつもの杖はマシンガンへと変化させている。

ちょっ、ちょっと何して!!!

アリスは驚きのあまり、言葉が出て来ない。
だがそんなアリスなど気にするそぶりもなく、ブラッドはビバルディを見据えていた。

「私の妻を返してもらおう。」
「女同士のお茶会も許さぬとは、どこまで器量が狭いのか。アリスよ、こんな男などやめ
て、わらわにするべきじゃ。わらわは、いつでも歓迎するよ。」

いつの間にか、アリスの側まで来ていたビバルディは、アリスの事をクイと抱きしめた。
その瞬間、アリスでも感じ取れる程の、ブラッドの絶対零度のブリザードを感じた。
や、やめて・・・それ以上刺激しないで・・・。
アリアスは無言で、内心涙を流していた。
こうなったブラッドは恐ろしい。
何が恐ろしいって・・・屋敷に戻ったら、確実に5時間帯は放してもらえなくなる。
ボリスと遊園地で遊んでいた時も、同じ事がおこって・・・その時はさんざんな目に合い、
しばらくは外に・・・いや、部屋からもでれなくなった程だ。

「私の妻だ。すぐに離すか、それとも無理矢理に離させて欲しいか?」

かちゃりと再度ビバルディに銃口を向けた。
だがビバルディはそんな事など気にしていない。

「ここはわらわの領土。殺せるはずがなかろう。そんな事も忘れたのか?」
「アリス。」

ビバルディの言葉は聞かないように、ブラッドのたった一言。
その一言で、彼の怒り具合がわかる。
私はビバルディの腕から、抜け出した。

「アリス、本当にこんな奴の所に戻る気なのか?」
「ごめんね、ビバルディ。また来るわ。」

軽く手を振るとブラッドの銃口の前に立ち、グイっと心臓の場所へ銃口を押しつけた。
そしてじっとを顔を見上げる。

「引き金引きたいなら、私を殺してからにして。」
「ほう、こんな女をかばうのか?」
「違うわ。私の知ってる中で、ブラッドが女性を殺した事実は知らない。私は、なんでも
あなたの一番になりたいの。愛されたのも一番なら、殺されるのも一番がいいわ。他の女
性になんて、あなたの一番を渡せるものですか。」

冷静に言葉を一つ一つ。
しばらくピンと貼り付けていた空気。
ブラッドが銃口をおろすと共に、柔らかな物へとなった。

「まったく、君は本当に私を飽きさせないよ。」

すぐにブラッドの香りへと包まれた。
額に軽く唇が触れると、ブラッドはビバルディへと視線だけ向けた。

「私の妻が世話になったな。失礼する。」
「フン。貴様の顔など、不愉快きわまりない。早々に連れてわらわの前から立ち去れ。」

ビバルディは背を向けて歩き出した。
それを見届けて、ブラッドも歩きだす。
私の肩に手をおいたまま、少しだけ置かれた手に力が入ってる。
ハートの城を出て驚いた。

「ブラッド、護衛の人たちは?」
「散歩に護衛などいらないだろう?」

平然とした顔で言い放つ。
仮にもマフィアのボス。
帽子屋ファミリーの命をねらうのは、後を絶たないとエリオットに言われた。
だから、その先頭にたっているブラッドは一番危険だと。
そして次に危険なのは、そのブラッドの横にる私だと・・・言われた。
だからこそ、出かけるときは、必ず護衛をつけて欲しいと懇願されたのだ。
部下の知らない所で殺されたら困るって。
それなのに・・・

「エリオットは?」
「私の奥さんは、私よりも他の男に迎えに来て欲しかったのかな?」
「違うわよ。護衛をつけないなら、エリオットくらいついてきても。」
「さぁな。黙って出てきてしまったからな。」

え?

アリスは固まった。
今頃、大騒ぎしているエリオットが頭に浮かぶ。
一応、メイド達には私がここにいることは伝えてあるけど・・・。
困った。

「困ったな。」

さほど困っていないように、ブラッドが呟く。
はぁ?
今更、この男が何困ると言うのだろうか。
無言でその先をそくせば、ブラッドはちらりと私を見下ろした。

「門番達はまた、遊んでいたようだな。元気すぎるのも、考えものだな。」

そう言われて前を向けば、血だらけのディーとダムの姿。
そして転がる死体は、ハートの兵士。
アリスは思いっきりため息をついた。
ここは、ハートの城の領土。
面倒になることこの上ない。

「あー、ボスとお姉さんだよ。兄弟。」
「本当だ、ひよこうさぎが捜索隊だしてたボスとお姉さんだね。」

そ・・・捜索隊。
やっぱりか・・・。
ガックリと力を落とすと、ブラッドは面白そうに口元をニヤニヤとしていた。
帰ったら、エリオットに謝らないと。

「ブラッド、屋敷に帰りましょ、早く。」
「!」

予想外に驚くブラッドに、アリスも疑問符がとんだ。
何を驚いているのだろうか?
何か変な事でも言っただろうか?
するとブラッドは、するりと私の腰へと手を回してきた。

「そんなに積極的になられると、夫としては頑張らない訳にはいかないな。」
「はぁ?!」
「我慢のきかないやつだ。わかった、急ごう。」

ふわりとお姫様抱きをされると、ブラッドは歩き出した。

「ちょ、ちょっと!ブラッド!!おろしてよ!!」
「君の足では、屋敷につくまで気が遠い。門番達、適当に遊んでから帰って来るんだぞ。」
「「はーい、ボス。」」

普通に歩いているのだろう、ブラッド的に。
私が小走りするぐらいの速度だ。
いつもだらだらと歩いているくせに・・・私に合わせてくれてたの?
アリスはふとブラッドの事を見上げた。

「何かな?」

無性にブラッドに抱きつきたくなった。
アリスは、周りに人の眼がないことを確認してから、ブラッドの頬へ口づけを落とした。

「!!」
「ありがとう、ブラッド。」

キュっと首に腕をからめて抱きつけば、ブラッドの腕に少し力が込められた。

「君は本当に、嫌な女性だよ。」
「どういう意味よ。」
「私をこれほどに夢中させた女性は、いない。そして、ここまで興奮するのもだ。考えて
みれば、君に会ってから「嫉妬」と言う気持ちも知った。我慢も相当してる。君が笑えば、
ほんわりと心臓がないはずなのに、ここが暖かくなる。すべて、君が私に与えた初めてだ
よ。」

ブラッドの言葉で、私が赤面したのは言うまでもない・・・。


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言い訳と言う名の後書き

こんばんは、はたまたこんにちはお嬢様方。
とうとう、ブラッドの小説を書いてしまいました。
ゲームをプレイしていて、ふと思いついたので一気に
文章にしてみました。

何も甘くなくてすみません・・・。

これから甘い小説になるように、頑張ります!!



ここまで読んでくださった素敵な皆様
本当にありがとうございました。

誤字、脱字があった場合
お詫び申し上げます。


マスター 冬牙