いつも同じ事の繰り返し。
毎日同じ事が繰り返される。
面倒。
そして退屈。
退屈は人を殺せる。
もっと、もっと私の退屈を吹き飛ばすような、出来事はないものか。
退屈しのぎに、女を抱いても面白くない。
抱かれる事を待ってる女。
抵抗しない女。




ふん・・・。





従順しない女は、面倒だが、従順しすぎる女は退屈だ。
いっそのこと、殺したくなる。
ああ、退屈だ。
体がだるい。
退屈は、この世でもっと忌むべき事だ。


コンコン


ノックの音で、ゆっくりとソファーから体を起こし、思い頭を扉へと向かせた。

「入っておいで、アリス。」

そろりと扉を開けた、余所者。
少し驚いたような、呆れたような、どこか冷めたような女。

「いつも思うけど、どうして私だってわかるの?ここって監視カメラなんてないわよね?」

キョロキョロと扉を見つめ、扉の上や天井を見つめる。
監視…とは、相変わらずなお嬢さんだ。
本当に君を監視などしていたら、自由に門番達やエリオットそれに使用人達と、口もきけ
ないと言うのに…。

「そんなものはついていない。以前にも言ったと思うが、お嬢さんだけはわかるのだよ。」

それは本当の事。
役付だからか。
自分のテリトリー内だからか。
それは分からないし、分かろうともしない。
別に分からなくても、生活に支障があるわけでもない。
考えるだけ、無駄と言うものだ。

「また、本を貸して欲しいの。」
「どうぞ、好きなだけ見ていくといい。今、お茶の支度をさせよう。」

ベルを鳴らせば、すぐにメイドが部屋に入ってくる。
茶菓子と紅茶を…と言えば、すぐに持ってくる。
本棚を見上げているアリス。
そんなアリスをぼんやりを見つめていた。
紅茶が冷めてしまうな・・・。
そう思っても、声をかける気にならない。
まぁ、そのうちにこちらに来るだろう。







そう思って数刻。(←本来は数秒。)





まったくもってアリスがこちらに来る気配がない。

「・・・アリス。お茶が冷めてしまう。こちらに来なさい。」
「ええ、後で頂くわ。」
「今すぐに私の横に来るんだ。」

アリスは、私の横をジーっと見つめていた。
一向に動こうとしない。
何を考えているのか、手に取るように分かる。
いつもの睦美ごとでも思い出しているのだろう。
お嬢さんもその程度の、女と言う事になるのか・・・つまらない。

「おいで、アリス。」
「あなた、熱があるんじゃないの?」
「は?」

唐突な言葉に、目を見開いた。
何を悩んでいたのかと思えば・・・熱?
アリスは私の後ろに回りこむと、自然な動作で額に手を乗せてきた。

「!!」
「ほら、やっぱり。あなた熱があるわよ。」

手を引こうとするアリスの手を、とっさにつかんだ。
ひんやりとする彼女の手。
確かに、気持ちが良い。
気持ちが良いと言うよりは、心地よい。

「うーん・・・君の手は心地よいな。」
「だから、熱があるからだってば。」

呆れたように繰り返す彼女の言葉。
たとえ熱があったとしても、私の額に簡単に触れられる女性はいない。
本当に、意表がつくのがうまい。
実に面白い。
余所者と言うのは、みんなこんなふうに退屈しないのだろうか?
ジー・・・とアリスの顔を見つめた。

「な、何よ。」
「いや、君は本当に私を退屈させないと思ってね。関心していた所だよ。」
「何ソレ。熱が出て、脳みそ沸騰してんじゃないの?」
「かもしれないな。」

グイっとアリスの手を引っ張る。
瞬間に、アリスの表情が蒼くなった。
椅子の背もたれが邪魔をして、アリスの上半身だけが私の胸へと落ち着く。
面倒な・・・。
思った瞬間、アリスの脇へと手を入れて、一気に自分の方へと持ってくる。

「・・・これ、どう言う状況よ。」
「なんだ、説明しないと分からないのか?困ったお嬢さんだな。いつもと同じように・・・

だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
そうじゃなくて!あなた、熱があるんでしょ?!おとなし
くベットに行ったらどうなのよ!」

見上げられて、怒られても、何の説得力もない。
手首をソファーへとおしつけて、彼女へと体重を少しだけかける。
ゆっくりと顔を近づける。
小さく、額にキスを落としながら、耳元へと口を持って行く。

「当然、君も一緒にベットに行くんだろう?」

息を吹きかけるように囁けば、アリスの顔が一気に赤くなる。
蒼くなったり、赤くなったり・・・本当に見ていて飽きないお嬢さんだ。
彼女の可憐な薔薇のような、唇に口づけを落とそうとした瞬間だった。
ポンと軽く、額を叩かれる。
いつのまにか私の手から逃げていた片手が、目の前にある。

「お願いだから、休んでよ。」

心配そうなアリスの声。
瞳にたまった涙。
う・・・これでは何も出来ないではないか。
私は、体を起こし上げた。

「熱があるとは、自覚症状がないんだがな。」
「あ、そう。そんだけ熱くて、普通にしていられるのが、おかしいのよ。」
「フム・・・確かに、いつもより体がダルイと思ってはいたが…そうか、私は熱があるのか。」
「だからそうだって言ってるで・・・」

彼女の言葉を最後まで言わせなかった。
己の唇で彼女の唇を奪った。
最初は、優しく。
彼女が、ほんの少しだけ口を開けるのを待ってから、舌を進入させて。
すべて翻弄させていく。
すべてを溶かすように。
トントンと苦しいと訴えて、アリスが胸を叩く。
それが合図のように、唇を離した。

「それで、熱はどれくらいあるのかな?」
「わ・・・わからないわよ!」

真っ赤になって怒っても、怖くともなんともない。

「そっ・・・」

いつものように余裕に笑みを作り、言葉を発せようと思った瞬間だった。
己の唇に、アリスの唇が・・・。
子供のような、いたずらなキス。
すぐに離してしまったが、私の頭を真っ白にさせるのには、効果があったようだ。
何も言えずに、マジマジと彼女の事を見てしまった。

「な、何よ。いつもやられっぱなしだから、たまにはお返しよ。」
「こんなお返しなら、いつでも大歓迎だよ、お嬢さん。」

彼女を横抱きにして、急に立ち上がった。
クラ・・・
数歩よろける。
ん?
そんな自分を呆れたように見つめる彼女の顔。

「だから、熱があるのに無理するからじゃない。」
「・・・なら、是非君に看病してもらおうか。治るまで、何時間帯もな。」
「駄目よ、仕事があるもの。」
「私が治るまではお休みだ。今、私が決めた。さぁ、私は病人だ。ベットへ行って、さっ
さと気持ちよくなりたい。君でも邪魔する事は許さないよ。」

そう言いながらも、足はベットへと向かっていく。

「だから、ゆっくり休むなら、私はこの部屋を出て行くから!!って、なんで、そっちに
行くのよ!!離してよ!!」
「それは無理な相談だ。私は君と一緒に寝ると決めたからな。さっき。」
「な!?何よ、その横暴!!」
「横暴ではない・・・。」

フッと彼女の耳を甘噛みする。

「君が恋しいと言っているんだよ、アリス。」
「!?・・・仕方ないわね・・・本当に。」

仕方ないと言ってるわりに、彼女の顔は嬉しそう。
キュと私の首に手を回してくるあたり、珍しい行動だ。
熱がある。
ああ、あるとも。
君の事を恋いこがれて、きっと、体の熱をもてあましていたんだろう。
だから、君にも責任がある。
この熱を解放する手伝いをしてもらわないとな。


そう、いつも同じ事の繰り返し。
毎日同じ事が繰り返される、面倒、そして退屈





・・・なハズだった日常。







そんな日常に色が染まり始める。
『 君色 』と言う色が。


君と言う甘い果実を知ってからは、すべてが色あせて見える。
君のいない時間が、退屈。
君がいないと、いらぬ事を考えて面倒。
君と言う一つの存在に、こんなにも私が熱くなるとは・・・。


本当にどうかしている。



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言い訳と言う名の後書き

こんばんは、はたまたこんにちはお嬢様方。
ブラッドの小説第2段です。
前回よりは、若干甘め・・・え?甘めではない?

あははは・・・すみません(^_^;)
なんとなーく、ブラッドさんは熱とかそう言うのに
無頓着なイメージがあり、そこで思いつきました。

ここまで読んでくださった素敵な皆様
本当にありがとうございました。

誤字、脱字があった場合
お詫び申し上げます。


マスター 冬牙





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