『 今夜は覚悟して? 』
「快斗君…。」
「蘭。」
お互いの唇がほんの数センチ。
あと数センチで口付けを出来そうだったのに・・・あの探偵坊主が・・・。
「蘭姉ーちゃん!!!!」
っと血相を変えて、事務所に入って来た。
無論、蘭はオレの事を突き飛ばして事務所に入ってきたコナンに視線を向けた。
オレは、蘭の力任せに突き飛ばされた為に、ソファーの後へと落ちていた。
「はぁ・・・はぁ・・・蘭姉ちゃん、大丈夫?」
「え?コナン君、どうかしたの?」
「・・・やっぱり。」
しこたま叩き付けられた身体を起こしあげると、半目になったコナンがオレの事を睨んで来た。
そんなに睨まなくても。
・・・てか、なんでオレがここにいるって分かったんだ?
本当に、彼女の事になると妙に鼻が利くことで。
コナンは、蘭の手を引くと、小さな自分の身体の後へと蘭を隠した。
まるで射殺すかのように睨み付けてくる。
オレはそんなコナンに、ニヤリと不敵な笑みを零した。
それが勝者にだけ許された顔なのかもしれないが・・・。
「なんか用かよ、探偵坊主。」
「蘭姉ーちゃんに気安く近づかないでくれる?快斗兄ちゃん。」
「それは無理な相談だな。」
パチンと指を鳴らした瞬間。
オレの手元に蘭が。
先程まで後にいたはずの蘭が突然居なくなった事に驚いたコナンは、自分の後を見つめ、蘭の事を見つめていた。
蘭の腰に手を回して、ニヤリと笑みを浮かべた。
「悪りぃけど、これからは大人の時間なんだ。ガキはガキ同士、仲良くするこったな。」
「どう言う意味だ、てめぇ!!」
いつものコナンの口調とは違う。
このままでは蘭に正体がばれてもおかしくない程に、凄むコナンを見て、ますます笑みを深めた。
「コーナーン君♪」
「ん?歩?」
扉の外から聞こえる声に、コナンが咄嗟に反応をしめした。
その瞬間。
オレは蘭の顔をこちらに向かせた。
「え?」
意味が分からずに、オレのされるがままになっていた蘭。
無論、そのままオレの唇は蘭の唇へ。
「ああ!!!!!!てめぇ!!!!!!」
いつものコナンなら、キック力増強して、その辺の物を蹴り飛ばして来ていただろうが。
いかんせんオレの手元には蘭ちゃん。
蘭には悪いが、一つのカードして防衛させてもらっていた。
蘭が手元にいる限りは、コナンが攻撃など出来ないと踏んでいたから。
「もう、快斗君ってば。」
「蘭、今夜。覚悟してて。」
ふわり耳元で囁けば、オレは再びコナンを見つめた。
「それじゃーな、探偵坊主。」
パチンと指を鳴らした瞬間、事務所内に煙りが立ち上がった。
その煙で目をくらまして、オレはそのまま外へと逃げた。
ふと見上げれば、事務所の窓。
その窓辺に駆け寄った蘭が心配そうにオレの事を見降ろしていた。
オレは、大丈夫と伝えるように唇に指を押し当てた。
それが伝わったのか、蘭も安心したような表情を見せると、ニッコリと口元を挙げた。
なんっつーか。
あの笑顔が反則だろ。
オレ、夜中まで我慢できっかな・・・。
つーか、会ってからもいつもみたいにポーカーフェイス出来るのか?
・・・。
足を動かしながら、ふと空を見上げた。
憎らしいくらいの青い空。
その空を見つめても、蘭の顔が思い浮かぶ。
先程までの蘭の唇の感触を思い出しては、胸の奥にくすぶっていた気持ちが、どんどん熱くなる。
親父、ごめん。ポーカーフェイス、無理。
簡単に諦めてしまったオレは、トホホ・・・と家に向かって歩き出した。
後書き 〜 言い訳 〜
こちらは短編になりますので、ほぼ読み切りです。
ごく希に続きのような形で書く場合もあるかもしれませんが・・・
ここまで読んでくださり
心より深くお礼申し上げます。
これにこりず、また読んで頂けますと幸いです。
文章表現・誤字脱字などございましたら
深くお詫び申し上げます。
掲載日2011.05.10
制作/吹 雪 冬 牙