『 一 言 だ け 言 わ せ て 。 』
※こちらは台詞のみの文章となります事、ご了承下さいませ。苦手な方はご遠慮下さいませ。











※学校から一人で帰ってる蘭。友達と電話をしながら帰っている。それを少し後ろから新一が眺めている。

蘭:そうなんだ・・・また随分とエスカレートしてきたね。
友達:そうなんだよね。いい顔するとさ、気持ちが悪いくらいに明るくなって、ちょっとでも
こっちが知らん顔すると、いきなり周りを巻き込んで虐めてくるし。
蘭:(苦笑)やってる事が子供だね。
友達:そうなんだ・・・だから、なかなか辞められないんだよ、バイト。
蘭:でも、必要とされるってのは、良い事だと思うよ。新一だって、いつも必要とされてるから、
単なる「推理オタクバカ王子」じゃないわけだし。
友達:・・・。
蘭:?どうかした?
友達:いや・・・まさか、突然ノロけが入るとは夢にも思ってなかったもんで。
蘭:ちょ、ノロケって違うよ!!もう!
友達:ともかくさー、もう少し頑張ってみるけど・・・。
蘭:うん。新一が暇そうだったら、ちょっと相談してみるよ。
友達:ああ、いいよそんな事しなくて。大丈夫だから。じゃーね、蘭。
蘭:あ、くれぐれも気をつけてよ。

※電話を切ると、しばらく携帯を見つめる。新一へと携帯をかける

新一:なんだよ、蘭。
蘭:新一?今どこにいるの?
新一:あててみろよ。
蘭:もう、そんな事言うって事は、事件の最中じゃないのね。
新一:ああ。
蘭:実はね
新一:それよりも、蘭。
蘭:ん?

パタンと携帯を閉じて、蘭の耳脇に口元を近づける新一

新一:今までの「推理オタク」にプラスして「バカ王子」なんてつけんじゃねーよ。
蘭:!?
新一:あははははは。
蘭:あははじゃないわよ!心臓止まるかと思ったでしょ!?いるならいるって言ってよ!
新一:お前の電話が終わるの待ってたら、お前から電話がかかってきたんだから、しょーがねぇーだろ。
蘭:もう。
新一:んで、俺に相談って?
蘭:あー・・・友達・・・って言っても、先輩になるんだけど、その人がアルバイト先で、嫌な思いをしてるらしいの。
新一:ふーん。
蘭:バイト先の人達に相談したらしいんだけどね・・・
新一:おおかた、その男が先回りして、その子の悪口並べ立ててたって所か。
蘭:すごい!なんでわかるの?
新一:バーロ。俺は探偵だぞ。そんくらいわかるっつーの。で、上の連中の反応は?
蘭:それがね、酷いの。言葉では「わかったよ」とか「大変な思いさせてる」とか言うんだけど、実際は
「彼女は嘘つきだから」ってまったく話しを信用してないの。
新一:・・・まぁ、信用されないには、されないだけの理由があるだろーけどな。
蘭:な!?新一までそんな事言うの!?
新一:早とちりすんなって。俺が言いたいのは、信用されない理由が、その子にあると言うよりも、むしろ
回りにあると思うって事だよ。
蘭:周り・・・?たしかに、そうかも。長年の上司だった人も、「私はもう君とは関係ない」とか言い出
してるみたいだしね。
新一:・・・ダッセー奴。
蘭:なんでも、孤立無援状態にされたらしいのよ。
新一:状態に気付いたのは、最近?
蘭:ううん。帝ってあだ名の人がいるらしいんだけど、その人の態度が豹変したんだって。
新一:わかりやすいなぁ。
蘭:うん。それに・・・もしかしたら・・・裏切りがあるかもしれないって、言ってた。
新一:裏切り?随分と物騒な話しだな。
蘭:・・・よくわからないんだけど、本筋ならば、その噂を流してる張本人一人だけだと思っていたんだって。
新一:でも、何か違和感がある。
蘭:そう。
新一:ま、えてしてそんな時は、最初に戻って、考え方を根本から覆すべきだな。
蘭:そうしたんだって。
新一:へぇ・・・随分と頭の回転が速い子じゃん。で?そいつの見解は?
蘭:だから、裏切りがあるかもしれないって。
新一:なら、あるんじゃねぇか。
蘭:なんでよ。信じたくないって言ってるのに?
新一:知ってるか?信じたくないは、その可能性が高いから出る言葉なんだぜ?蘭の話しを聞く限りだと、
その子は随分と、考えを巡らす・・・そうだなぁ、策士みたいな感じのようだし。
蘭:まぁ、そんな感じなクールの子だよ。
新一:となれば、なおさら、確信に近いか。確信に近づくために、わざと言ってるか。捜査には、いくつかの
やり方があるけど、一つは秘密裏に迅速に行う方法。もう一つは、わざと経過をマスコミに話して、あぶり出す方法。
ま、多分彼女は、後者をとったんだろうけどな。孤立無援じゃ、仕方ねぇけど。
蘭:バイトもね、やめたいって言ってるのに、辞めさせてもらえないんだって。
新一:なんで?
蘭:一度は辞めて良いって許可が出たんだけど、後から撤回されたみたい。
新一:彼女が、何か条件をのんだのか?
蘭:ううん。それがね、上司の人に頭さげられちゃって、断りきれなかったんだって。
新一:ほう・・・
蘭:なによ、その顔。
新一:俺は蘭の友達を知らないから、なんとも言えないけど・・・
蘭:?
新一:そんなに辞めたがっていた人間が無条件で、辞める日時を延期する訳・・・考えてみろよ。
蘭:条件アップ?
新一:普通の人間なら、そう思うよな?でも無条件だぜ?
蘭:うーん・・・でもね、周りは詳しい話しをしらないから、どんどん悪い奴になっていってるの。
最初の悪口が発端だと思っていたんだけど・・・それだけじゃ説明がつかない所がいくつかあるんだって。
新一:なるほど・・・いくつも布石を置いてあったと言うわけか。
蘭:かわいそうなんだよね。
新一:ソレ。
蘭:?
新一:辞めるってはなしを延期させる。人は「なんで?」って単純に疑問に思うだろ?それにまず行き着くのが
「給料アップ」だろ?バイトは給料でなんぼって所があるしな。そしてもう一つは「ヒロイック症候群」と思われてる事。
同情してもらいたい、こっちを見てもらいと思ってるんじゃないの?って感情だな。どちらも陰口にはかわりねぇけど、
決定的な差が一つある。わかるか?
蘭:決定的な差?一つはお金で、もう一つは気持ち?
新一:半分正解。「お金」の問題ってのは、何事よりもシビア。だけど、以外とあっさりしてるもんだぜ?バイトなんて、
そこで給料があがらないなら、辞めてしまえばいいだけだしな。自分も欲しいから、騒ぐだけだろ?でも、後者は違う。
的確な「悪意」があるって事だよ。
蘭:・・・。
新一:彼女を孤立無援にして、得するもの。それはたった一つ
蘭:早く辞めてしまうこと?
新一:違うよ。自分にだけ頼ってくるように仕向けたのさ。自分にだけ、なんでも話すようにね。だが、
その分だと彼女はそれを拒否したんじゃないかな。頭が良い分、その理由にも気付いたって所だろ?
蘭:そうなんだよね。
新一:だから、最初は相手の作戦で孤立無援にさせる予定だったのが、いつのまにか彼女の作戦に変わっていたんだよ。
孤立無援になるようにね。
蘭:え!?
新一:彼女を信用してる人間もいるんだよな?
蘭:いるよ。昔ながらの人達とか。
新一:あははは、すげぇな!その子。
蘭:なんで?新一にはわかったの?
新一:まぁな。彼女には、相当なにかの大きな自信に繋がる、何かを持ってるって事だよ。それも、
その辺の人には、知ることが出来ないような、「何か」をな。
蘭:そんな事、何も言ってなかったよ?
新一:言うわけねぇーだろ。それを出す時は・・・蘭、気をつけておけよ。
蘭:へ?
新一:多分、そいつ・・・。
蘭:・・・新一、どうしよう・・・。私、今から逢いに

※新一に腕をつかまれる

新一:今はやめておけ。
蘭:でも!!
新一:解決しようと頭がフル回転してる時ってのは、他人の邪魔が何よりも、いらつくもんさ。
蘭:他人って!!そりゃそーかもしれないけど・・・
新一:今は、その子にやらせてぇよーにやらせて、見届けてやればいいじゃねーか。助けなんて、
きっと彼女は求めてねぇし、望んでねぇと思うけど。
蘭:でも、何かあったら助けて欲しいって
新一:どこかに一緒に行くとか、話しを聞くとか、その程度のもんなんじゃねぇのか?
蘭:うん。そう言われた。
新一:その程度の事、彼女の助けにも、望みでもねぇよ。きっと、彼女は自分と同じ考え方が出来る人はいない
と判断したから、自分一人で動き出したんだと思うぞ?まぁ、一人の方が、動きやすいからな。いくら相棒と言
えとも、予想に反する事されてしまえば、そこから作戦は積み直しになるからな。・・・で、お前は、意味はわ
かってるよな?
蘭:心細いからと、あんまり人に接してたくないから、一緒にいて欲しいって事でしょ?
新一:バーロ。追い込みやってる人間が、『心細い』『人と接したくない』なんて理由で動く事はまずない。
証人だよ。証人。
蘭:証人?
新一:言った言わないの論争に、杭打ちするんだろうな。なかなか考えたもんだな。きっとその場には、
当人の他にも、まだ来ることになると思うぞ?
蘭:なんで?
新一:下手にバラバラに集めるよりは、怪しい物同士を1カ所にまとめるのが一番だからな。あぶり出すなら、
当然だろうな。ま、彼女の中で誰が怪しい物としてリストアップされてるか、知りたい気もするけどな。
蘭:新一・・・私なんかが行っていいのかな?彼女の邪魔になるような気がして。
新一:それも計算済みだと思うぜ?実際にその子って嫌な奴かもしれねぇな。相手の性格や行動を全て把握した上で、
きっと舞台を作り、配役を決めて、台本を決めてるはずだ。言われたんじゃねぇーか、蘭は蘭のままでいいって。
蘭:うん。
新一:だろーな・・・ま、それが彼女にとって不幸にならなければいいけど。
蘭:不幸?
新一:・・・まぁな。
蘭:どう言うこと、新一?ねぇ?

新一:蘭。


蘭:?


新一:お前、その子にあまり深入りすんじゃねーぞ。


蘭:なんで?

新一:俺の推理が正しければ・・・間違っていて欲しい気もするけど

蘭:新一?

新一:お前とは、住む世界が違う人間だって事だよ。俺と怪盗キッドの住む世界が違うようにな。

蘭:!!



後書き 〜 言い訳 〜
 
 
こちらのシリーズは、以前にブログで掲載していた
台詞のみ作品になります。
 
 
ここまで読んでくださり
心より深くお礼申し上げます。



これにこりず、また読んで頂けますと幸いです。
 
文章表現・誤字脱字などございましたら
深くお詫び申し上げます。
 
掲載日 2010.06.11
再掲載 2010.11.25
制作/吹 雪 冬 牙


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