微熱
「蔵馬っ…。」
桜色になったぼたんの顔。
何度も胸を叩いて主張する彼女の「STOP」の意味を無視して。
久しぶりに会った彼女の唇に、夢中になって口付けを交わした。
「はっ・・・もう、なんなんだい!突然!」
「突然じゃないですよ・・・どれだけ長い間、会えなかったと思ってるんです?」
「それはっ」
ぼたんが言葉を紡ごうとした途端。
彼女の口を封じ込めた。
ぼたんの匂いが鼻腔をくすぐる。
それだけで、全身が痺れたような感覚に陥る。
「ぼたん。」
「なんだい?蔵馬。」
「ぼたん、愛してますよ。」
「…なっ!?」
桜色から、真っ赤になって。
口をパクパクしてる彼女が可愛くて。
お互いに長い時間を生きて来てると言うのに。
彼女は、全くの無知で。
恥ずかしがり屋で。
だからこそ、誰にも渡したくなくなる。
「ぼたんは?」
息の上がってる彼女の顔を覗き込んで。
ニッコリと微笑んでみせる。
彼女は、怒った顔を作ってはいても、顔は真っ赤で。
逆効果だって事を知らない。
「そんなの、わかってるだろっ。」
「いいえ、わかりません。言って下さい。」
ぼたんの肩口に顔を埋めれば
「す、好きだよ。」
小さな声。
本当に小さな声で聞き逃してしまう程。
でも、久しぶりの彼女の声での「好き」って言葉。
こんなにも嬉しいものなんて。
「ぼたん。」
「え?」
「これからは、もっと頻繁に逢いに行きますからね。」
仕事だとか。
時間がないとか。
そんなの関係ない。
俺はぼたんが好きなんだ。
まるで熱に魘されるように、ぼたんを欲している。
彼女が側にいてくれないと・・・
「生きていけないんですよ。」
「・・・そんなの、私だって同じさね。」
以外な返事に、俺は目を見開いた。
真っ赤な顔で、にっこりと微笑むぼたんの表情に。
俺の顔も熱を帯びて。
つい口もとを手で隠してしまった。
反則。
こんな顔されたら・・・。
「今夜は寝かしませんよ?」
「へ!?」
「誘った貴方が悪いです。」
「誰も誘ってなんかないさね!!!ちょっとぉぉぉぉ!!!!!」
ぼたんの声が俺の部屋に響いても。
俺しかいない部屋。
いくらでも叫んでも平気。
これから長い夜がはじまる。
俺達の夜が。
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