タイトル 「 シサク 」
あると缶様へ捧げ物 2008.01.28





「 シサク 」

 

チーン!

 

キッチンから軽やかな音が、みんながくつろいでいる居間にまで

聞こえてきた。

その音に三者三様の反応を見せる奴ら・・・。

 

クストはチラリと、キッチンへ視線を向けてから、レムにそっと近寄った。

 

「お、おい。質問なんだが、冬牙の奴は?」

「なんでも今日はヴァレンタインの予行練習だぁ!とか言って、朝からキッチンに籠もってますね。」

 

何でもないように、ペラリと分厚い本を読みふけるレム。

その答えを聞いて、クストは顔が引きつった。

予行練習?

 

って事は、ここにいれば必ず毒味役になるな。

よし!

 

何かを決心するとクストは立ち上がり、扉へと急いだ。

 

「あ〜俺、仕事だから、城に戻るわ。じゃーな!!」

 

脱兎の如く消えたクスト。

レムはその様子をチラリと横目で見ると、また本へと視線を落とした。

 

少しして、甘い香りと共に、冬牙が部屋に入って来た。

 

「適当に食べてみてねぇ♪よし!第二弾!!」

 

冬牙は腕まくりをするとまたキッチンへと消えて行った。

クンクンと机の上のお菓子の匂いを嗅ぐ男、約一名。

 

「なぁなぁ、レム。これって何?」

「見たとおり、お菓子ですよ。」

「なんつーの?」

レムは顎に手を添えて、少し考えるように、天井を見上げた。

「シ、サ、ク・・・?とかなんとか言ってましたけど。」

「ふーん・・・あ!そうだ!!」

 

モルは近くのナプキンにケーキらしき物体を包み込むと

ニッコリと微笑んだ。

 

「レム、ちょっと出かけてくる!夕方には帰るから!!」

「モル、2つではなくて、3つ持ってお行きなさい。haury嬢にも、是非!おすそわけして上げて下さい。」

「でもそしたらレムの分がなくなっちゃうよ?」

「僕は気にしないで下さい。冬牙も次ぎの灼いてるようですから。」

「うん!じゃ、持ってくな!」

 

嬉しそうに包み直し、そのままモルは扉を出て行ってしまった。

そんなモルをニヤリとした顔つきで見つめるレム。

 

「試作って意味わかってないみたいですね。ま、僕に毒味をさせるなんて100万年早いですよ。」

 

レムは本を閉じると、その場から静かに消えた。

 

 

〜 haury宅 〜

 

「琥珀〜!遊びに来たぞ!!!」

「うわぁ、いらっしゃいモル君。」

「これ、一緒にくおーぜ!!」

 

包み紙から出したのは、小さなカップケーキが3つ。

琥珀の前にピンクのケーキを一つ。

hauryの前に黒のケーキを一つ。

そして、自分には白いケーキを一つ。

 

「コレ何?」

 

クンクンと匂いを嗅ぐ琥珀に、モルはニッコリと笑った。

 

「シサクって奴だって。旨そうだろう!?冬牙の手作りだから、旨いぜ♪」

「え・・・?」

 

シサクと聞いて、hauryの手が止まり、モルの事を見た。

モルと琥珀はすでに肩に腕を組んで、食べようとしている。
hauryは、恐る恐るモルに聞いた。

 

「ね、ねぇ、モル。そのシサクって誰から聞いたの?」

「レム。」

「・・・。」

 

名前を聞いて、hauryはそのケーキを手元に置いた。

シサク・・・ってきっと試作品の事だ。

直感的に思ったhauryは、レムが毒味役を押しつけていた来た事に

気が付いたのだ。

 

「うまいな!」

「うん!シサクってケーキ、美味しいね♪モル君!!」

 

美味しそうに頬張る二人を見て、hauryはため息をついた。

ある意味、純粋な二人なんだけど・・・。

 

 

ま、事の真相は私の胸の中に仕舞っておきましょ。

 


おわり♪



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は〜い、こちらはhaury様に差し上げたイラストでーす。
実は、このケーキは実話なんですね。
今日ケーキを焼いて、結構旨く出来たので、おすそわけ
させていただきました♪


2/14に向けて頑張るぞー!!


マスター 冬牙