『 大 切 な・・・ 完 』
数日後。
乱菊と二人で飲み屋に来ていた。
乱菊の泥水状態にほとほと呆れていた時だった。
「本当に姉が、心配で心配で。ギンの奴だって、なーんにも教えてくれないし。」
「まぁまぁ。」
「ボクが何?ひゃー・・・これまたえろう酔ってんなぁ、乱菊。」
後ろから声をかけてきたのは、時の人。
市丸だった。
は市丸を認識した瞬間。
スカーン
「
痛い!!!なんやの突然!!!
」
市丸の頭を思いっきり殴り飛ばした。
あまりの痛みに市丸の目から涙が零れる。
「ギン、あんたねぇ・・・わざとしたでしょ。」
「なんの事です?」
「雛にわざと読ませる為に、書類渡したでしょ。」
書類?
はて・・・と首を傾げるギン。
しばらくして「ああ!」とポンと手を打つと、ズイっとに顔を近づけた。
「あれは隊長のみ閲覧可能な書類やで?雛森ちゃんが読んだら、あかんのちゃうん?」
「・・・グルか。」
「なんの事かわかりまへんなぁ。」
ギンはクイ・・・との手元にあった酒を煽った。
そのままの隣へと席を落ち着かせる。
は参ったと言うように、深いため息をついた。
「あんまし雛を虐めないでよ。アレも私の可愛い後輩なんだから。」
「別に虐めてへんよ。ただ、何も知らずに平穏に護られ取るのが気にいらんかったんや。」
「ギンは雛みたいなタイプは嫌いなの?」
「嫌いなんて、酷いわぁ。何もないよ、雛森ちゃんには。」
何もない。
それは好きでも嫌いでもない。
逆を言えば、そう言う感情の対照にすら入らないと言う事。
一人の人格として認めてない。
まぁ、それもまた人って奴。
は諦めるように、酒を口にした。
「それとギン、現世のお土産調達ありがと。それも計算に入れて、やったんだろうけど。」
チラリと流し目をすれば、いつもと変わらない笑みをたたえる市丸。
さぁ?と肩を上げて、さらに酒を口にした。
「別にあれくらい、なんて事ないわ。」
雛森についての言葉なのか。
お土産調達の言葉なのか。
市丸のことだ、きっと両方の意味なのだろう。
は軽くため息をつきがてら、席を立ち上がった。
「そ。じゃー後、乱菊の事よろしくね。私、約束があるから。」
チラリと見上げるギンは、の袖端を掴んだ。
「十番隊長サンのトコに行くん?」
「・・・。」
ほんのりとの顔が赤くなる。
「うるさいよ」と一言、はギンの頭を撫でて店を後にした。
許さへん。
ボクからを取る奴は、たとえ乱菊だろうとも
絶対に許さへん。
十番隊長サンに、はもったいない。
十番隊長サンよりも前にに出会ってるのはボク。
十番隊長サンよりも前に好きになったのもボク。
絶対に渡したくない。
でも
が、それで幸せなら・・・
ボクは黙って見てる。
十番隊長サンはいつかよりもあの幼馴染みを選ぶ。
その時までは・・・。
クック・・・。
を預けておくわ。
つづく
後書き 〜 言い訳 〜
ここまで読んで下さり
心より深くお礼申し上げます。
文章表現・誤字脱字などございましたら
深くお詫び申し上げます。
再掲載 2010.11.02
制作/吹 雪 冬 牙
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