タイトル 「 例外 」
SS
狙った通りに、蘭は深紅のカーテンの裏にいた。
「蘭!!」
「キッド!!!!」
手を伸ばせば、蘭が俺に向かって抱きついて来た。
互いのぬくもりを確かめ合うように、蘭をかき抱いた。
蘭も、それに答えるように、俺の背に回した手に、力が入る。
無事で・・・良かった・・・。
蘭の顔を見ようと、少しだけ体を離した。
「大丈夫か?蘭。」
小声で快斗として、蘭に話しかけた瞬間。
俺の中で、何かがはじけた。
いや、世間では切れたと言うのだろう。
「大丈夫」と言う彼女の強がりな笑み。
だが、その頬には明らかに何かで傷付けられた後。
うっすらと血がにじむ彼女の頬を見て、一瞬にしてポーカーフェイスは崩れた。
「本当に・・・どうしようもない人だ、貴方は。」
再び、奴に向けて銃口を構えた。
自分に蘭を引き寄せる手につい、力が入ってしまう。
不安そうに見つめる蘭の視線。
「キッド・・?」
蘭の声に応える事が出来なかった。
蘭を傷付けたと、その事実に頭に一気に血が上った。
「私は、人を傷つける事は好みません。ですが・・・」
グイっっと蘭を抱きしめた。
許せなかった。
自分にも。
傷つけた、目の前の男にも。
「私にも例外はある。」
「た、助けてくれ!!!もう丸腰なんだ!!!」
「蘭に手を出した事、後悔してもらう。」
次へつづく
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マスター 冬牙