タイトル 「 蘭ちゃん! 」



SS


待ち合わせの時間までは・・・あと30分か。

オイオイ。
俺、どれだけ浮かれてるんだよ。

久しぶりに蘭ちゃんとのデートの約束が出来て、確かに昨日の夜から
ワクワクしていた。
おかげで昨日の仕事で、探偵君と余計な争いまでしてしまったけど。


「あーあ。」

俺は自嘲気味に口元を上げた。


親父、ごめん。
今日は、ポーカーフェイスは無理だわ。

未熟な自分を、きっと親父は笑っているんだろうか?
そんな事が頭をよぎって、そのまま空を見上げた。



蘭に、早く逢って・・・彼女のぬくもりを感じたい。





はぁ、はぁ。
今日こそは、快斗君よりも早く待ち合わせ場所に行くんだから!
よし、30分前。
さすがに来てないでしょ。

頭では余裕な言葉が浮かぶが、体は正直で。
走らなくてもいいのに、すでに駆け足。
待ち合わせ場所が視界に入ってきた瞬間、私は足を止めてしまった。

突然立ち止まった事で、周囲に人が不思議な視線を送りながら通り過ぎる。

「快斗君・・・。」

まるで天に懺悔するかのような、虚空を見つめる快斗君の表情。
声・・・かけられない。
快斗君と心を通わせたとしても、決して入れない領域は存在する。
ソレを、再認識させられた感じがした。

ふと、私に気付いた快斗君は、嬉しそうに手をヒラヒラを振ってきた。

「蘭ちゃん!」
「!!」

一瞬、快斗君と怪盗キッドの姿がダブって見えた。

先程までの表情から一転。
コロコロと可愛い笑顔で、私に向かって手を振ってる。

どうして・・・?
私にだけ、弱い所見せてくれればいいのに。
あなたの荷物は、私には持たせてくれないの・・・?

私がずっと立ち止まってる事に不信に思った快斗君が、ヒョコヒョコと近づいて来た。
私の目の前に立ち止まると、ヒラヒラと目の前で手を振った。

「おーい、蘭ちゃん?」
「快斗君・・・。」
「ん?」


何も考えられなかった。
ただ、「愛しい」って言葉だけが、頭を支配されたみたいに。

「蘭ちゃん?」

「大好き。」


「へ?」



突然の私の言葉に、快斗君の笑顔が崩れ、顔が真っ赤になった。
完全に不意を突かれたって顔の快斗君。
世間で騒がれている、常に不敵な笑みを浮かべ、ポーカーフェイスの怪盗キッド。
唯一、そのポーカーフェイスを崩せる事実に
私は、嬉しくてにっこりと笑みを浮かべた。


つづき


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マスター 冬牙