タイトル 「 ちょっとした事が嬉しいんです、女の子は。 」
園子達と一緒に、夏休みを利用して海に遊びに来てた。 さすがは園子。 鈴木財閥が持っているって言う、無人島。 無論、コナン君やお父さん、阿笠博士に、少年探偵団だけしかいない。 一般の人は誰一人としていない。 だから、こんな事も出来るのかもしれない。 みんなで宝探しごっこをしていた時、白昼堂々と現れた白い魔法使い。 太陽に照らされた白い衣装は、余計に眩しく光って見える。 「攫いに来ましたよ、お嬢さん。」 そう言われて手を差し伸べられた。 周りを見渡して誰もいない事を確かめてから、怪盗キッドへと駆けだした。 手を握った瞬間に、男の人を感じさせる程の力でキッドの胸へと引き寄せられる。 そのまま首に腕を回せば、耳元でクスリ…とあの特有な笑みが聞こえた。 「そんなに私に会いたかったですか?蘭。」 「・・・キッド。」 そんなの、当たり前じゃない。 でも口には出さない。 その代わりに、首に回した腕に少しだけ力を込めた。 その瞬間に、フワリ・・・と体が浮いた。 「え!?」 突然の事で、キッドの事を見つめた、悪戯っぽい目とあった。 パチンとウィンクして指で下を指した。 言われるままに、下を見れば。 「蘭姉ーちゃん!!!」 遙か下にコナンの姿。 「コナン君。」 「それじゃ、お宝は頂いていくぜ、名探偵サンよ。」 「んのヤロー!キッド!!!降りて来い!蘭を返せ!!!」 ニヤリと笑みを浮かべると、そのまま上昇気流にのって、空高くへと舞い上がった。 「クッソ!」 見失わないようにコナンが、キッドと私を見ながら走り出した。 だけど、そんな姿もあっと言うまに見えなくなってしまった。 ほの少しだけ空の散歩を楽しんで、到着したのは、島の反対側。 いつものように、音もなく降り立つその様は、魔法使いのよう。 「ほい、到着。」 「気持ち良い、風だったね。」 「そーか?さすがにこの衣装は、この夏にはキツイぜ?」 そう言いながら、怪盗キッドから快斗としての顔を覗かせる。 クイッっと帽子をあげて、蒸れた頭を冷やすように、大きくため息をついた。 モノクルを外して、器用な手でもて遊ぶその様を見てて、ふと手を差し出していた。 「何?」 「ねぇ、それ貸して。」 「へ?」 言われるままに快斗は、蘭にモノクルを渡した。 「へぇ〜こんな風になってるんだ。」 言った瞬間に、蘭はモノクルを空へと翳した。 よく磨かれたガラス。 丁寧に扱われている事がわかる程の、愛着を感じて、少しだけモノクルに嫉妬してしまう。 「ほらよ。」 ポンと頭の上に乗せられたのは、怪盗キッドの帽子。 びっくりして快斗の事を見た、蘭。 快斗はニィっと笑みを浮かべた。 「さすがにこの暑さはキツイからな。それ、かぶっとけよ。」 「え?いいの?」 「へ?なんで?」 意味が分からないと疑問符を浮かべる快斗。 蘭は頭に乗ってる帽子をチラリと見上げた。 怪盗キッドの帽子。 きっと誰も触った事がないはず。 それに、こうして白昼堂々とキッドの格好して会いに来てくれて その上、正体がばれるかも知れない危険性だってあるのに、帽子を貸してくれる優しさ。 蘭はニッコリと微笑んで、帽子をギュっとかぶり直した。 「へへへ♪」 そのままモノクルも片目につける。 なんだろう。 すごく特別な感じがする。 自分だけが許された、その優越感。 快斗にとって、それだけ特別に思われてる何気ない想い。 「なんだよ、ニヤニヤしやがって。」 「だって、怪盗キッドの帽子だよ?貴重じゃない。」 「そーか?普通の帽子だと思うけどなぁ?」 まだ意味が分からないのか。 快斗は、不思議そうに腕を組みながら首を傾げた。 「えへへ♪」 嬉しそうな蘭の笑顔。 何がそんなに嬉しいのかイマイチ理解出来ない。 「何がそんなに嬉しいんだよ?」 「教えてあげなーい。」 そう。 女の子ってね。 好きな人からの ほんの些細な事で こんなにも嬉しくなっちゃうんだよ。 でも、なんとなく悔しいから。 今は教えてあげない。 「なんなんだよー蘭。教えろよ−。」 「貴方、怪盗なんでしょう?私の考えを盗んでみたら?」 「…にゃろ。」 (( おまけ )) 日が暮れた頃、ようやく戻った蘭。 無論、戻って園子や父親に謝っていた蘭。 ふくれ面をしたしたコナンが、ポケットに手を入れて静かに蘭の後に近づいた。 「蘭姉ーちゃん。」 「あ、コナン君。コナン君も、ごめんね?」 蘭が苦笑しながらコナンに視線を合わせるように膝をつくと、コナンは蘭の手を引いて再び外へ連れ出した。 「ちょ、ちょっと、コナン君!?」 「いいから、来て。」 「う、うん。」 手を引かれながら来たのは、夜の海。 波の音だけが響く。 二人だけの空間。 何も言わないコナンの背中を蘭は穏やかな表情で見つめた。 「夜の海って綺麗ね。新一も来れれば良かったんだけど。」 「俺が…新一兄ーちゃんが来てたら、怪盗キッドと一緒に行かなかった?」 振り返ったコナンの視線は、真剣そのもの。 海風に、髪を撫でつけながら蘭は海の彼方を見つめた。 「どうかな。」 「…す、好きなの?怪盗キッドの事。」 「え?」 「新一…兄ちゃん、よりも。」 今にも泣きそうなコナンの顔。 まるで新一に言われてるような錯覚に陥る。 『好きなのか!?俺よりも。』 そんなわけ、ないか。 苦笑した蘭は、コナンの頭を優しく撫でた。 「怪盗キッドは、犯罪者よ?好きじゃないわ。」 「ほんと!?」 「ほんとに。」 ぎゅっとコナンの事を抱きしめた蘭。 よいっしょ・・・っと抱き上げた瞬間に、コナンは顔を真っ赤にして硬直した。 「ふふふ。少し寒いね。」 「・・・う、うん。」 怪盗キッドは、怪盗だから。 でも 蘭はふと海側とは逆の山の方へと視線を向けた。 『快斗は、好き。』 まるで誰かに言うように、口もとだけ動かす。 決して声には出さずに。 そこに、彼が見ていると知ってるかのように・・・。 コナンに見つかったバージョン EDはコチラ。 |