タイトル 「 ライバル、現る。 」

「新一、なんで新一って呼んじゃダメなの?」
「別になんでもいいだろ、毛利さん。」

新一が『毛利さん』と呼んだ事で蘭の目から涙が溢れた。

「蘭ッ!!」
「ふえ?」

ものすごい勢いで走り寄ってくる一人の少年。
新一と蘭の間に入り、蘭を背に隠した。

「蘭をいじめるなッ!」

誰だよ、コイツ。
お互いに睨みつけるように見つめ合う。

「快斗…。」

蘭が突然乱入してきた奴に服の端を掴んだ。
それを見た瞬間に、新一の中で説明のつかない怒りがこみ上げて来た。

「バーロ。誰がいじめてんだよ。お前、だれだよ。」
「おれは、くろはかいと。蘭の『ともだち』だ。お前こそ、だれなんだよ。」
「おれの名前は、くどう。くどうしんいち。」

しんいち?
快斗は、さらに新一の事を睨み付けた。

「おまえが、『しんいち』ってヤツか。蘭のこと、泣かせたヤツなんだな!!」
「泣かせてなんかねぇーだろ。」
「おまえが名前をよぶなって言うから、蘭がすっげぇ泣いてだんだからな!」
「やめて、やめてよ、ふたりとも。」

蘭は泣きながら快斗のシャツを引っ張る。
それを見て、快斗はぐっと口をつぐんだ。

なんでこんなヤツを庇うんだよ。

快斗と新一は互いに蘭の事を見て思った。
新一はふと視線をそらすと、チラリと蘭の事を睨み付けた。

「まっ、良かったじゃねぇーか。新しい「お友達」が出来て。あばよ、『毛利さん』。」
「新一ッ…!!」

蘭がさらに泣いたのは分かった。
でも、蘭とかいとってヤツが一緒に居るところを見れば見るほどに
蘭に対して怒りがこみ上げる。
蘭から逃げるようにして新一は、走り出した。
その場に座り込んで泣いてる蘭。
それを慰めるように、抱き寄せている快斗が視界の端に入った。

なんだよ、蘭のヤツ。バーロ。

すがるように泣いてる蘭の姿を見て、余計に腹が立った。
快斗は走り去って行く新一を見つめてから蘭の背中を落ち着かせるように
ポンポン…と叩いた。

「蘭、泣くなよ。あんなヤツの事なんか、気にするなよ。蘭には俺がいるじゃん。」
「新一の悪口言わないで!!」

キッ!と睨みを利かせた蘭。
快斗は、はぁ〜と深いため息をついた。
せっかく、父親に無理を言ってここまで会いに来たと言うのに。

「快斗。」
「とーさん。」

盗一が静かに近づいてきた。

「蘭ちゃん、ごめんね。これで機嫌を直してくれるかな?」

ポンッ!と花束を出し、ポンッ!と可愛いハンカチを出した。
蘭は一瞬の事に、目を瞬いた。
そして、花束を受け取ると、可愛い笑顔を見せた。

「ありがとう、快斗のパパさん。」
「いいえ。それに、彼が迎えに来てるよ。」
「え?」

盗一が立ち上がり、後を振り返るとそこには先程走り去った新一の姿。
むすっとした表情は変わらない。
だが、蘭の事が心配で戻って来たのだ。
ズンズンと前に進んで来ると、蘭の手を取った新一。


「蘭、帰るぞ。」
「あ、え、でも、快斗がっ…!!」
「蘭は、おれと帰りたくないのかよ。」
「新一、今、蘭って言った。」

蘭が嬉しそうに言うと、新一の顔が一瞬にして赤くなった。

「まてよ、くどうしんいち。」

快斗が呼び止めると、新一は足を止めて、背中越しに快斗の事を見た。

「なんだよ。」
「今度、蘭の事を泣かせたら、絶対にゆるさないからな。」

ムカツク。

お互いに思う事は一緒。
快斗は、蘭に近づくと、蘭の頭を優しく撫でた。

「蘭、またなかされたら、すぐにおれにいえよ!かけつけてやっから。」
「うん!ありがと、快斗。」

蘭の頭の上にある手を、新一は払いのけた。

「おまえ、蘭になれなれしいんだよ。」
「おれは、蘭専属の『魔法使い』だから、いいんだよ。なぁ〜蘭!」
「うん!」

なんだよ、蘭も嬉しそうな顔して。
新一は無言で蘭の手を引いて歩き出した。


おもしろくねぇ。


二人はなんだかんだと、考える事は一緒なようで…。

似たような表情に、盗一は忍び笑いをしてしまう程だったとか。


それはまだ、新一達が小さい時のお話。




つづき


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マスター 冬 牙