WILL…
第九話 (ちょっとおまけ)
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0時
クリスマスか。
ふと窓の外を眺めた。
冷めたコーヒーが、口の中に広がる。
そろそろ寝ないといけないな。
そう思い、カーテンを閉めようとした時だった。
「!!」
少し離れた所に浮かぶ、桃色の着物の少女。
その表情は、明るいとは言えない。
俺は窓を開けた。
「ぼたん!何やってるんですか。こんな寒空に。」
「蔵馬・・・。」
「ともかく、中に入って下さい。暖かい飲み物、持ってきますから。」
「・・・うん。」
ぼたんは、フワリと窓から入ってきた。
それを確認して、俺は静かに窓を閉めた。
ぼたんをベットへと座らせて、部屋を出た。
母親はすでに眠っている。
俺は静かに台所へ行き、暖かいココアを入れて、また部屋へと戻った。
「ぼたん、コレ飲んで。」
「すまないねぇ。」
ぼたんの元気のない、笑み。
俺は隣に腰をおろすと、ぼたんの事を見つめた。
フワリと頭を撫でてやる。
ぼたんは、そのまま俺の肩に頭を預けてきた。
「何かありましたか?」
「蔵馬に謝らないといけないんだよ。」
「俺に…ですか?」
間近でぼたんが俺を見上げてきた。
その目は、涙を我慢してるのか、潤んでいた。
俺は、ぼたんが話し出すのを、じっと待っていた。
すると、ぼたんはうつむき加減で、話しだした。
「ごめんよ、蔵馬。」
「謝られてる意味が分からないと、対処のしようもないのですが?」
「私…忘れてて、買ってないんだよ。クリスマスプレゼント。」
本当に申し訳なさそうに、見つめるぼたんの目。
その不安に揺れる目が、可愛くて仕方なかった。
俺は、そのままぼたんの唇に自分の唇を合わせた。
そのままぼたんの手に持つ、カップを机へと後ろ手に置く。
ペロリと唇を舐めると、ぼたんは真っ赤になって俺を見つめていた。
目をまん丸くして。
思考が止まったかのように、俺を見つめていた。
「俺は、あなたがいれば十分ですよ。」
「幽助もそう言われたんだけど…。」
「幽助に?」
そう聞いた瞬間。
俺は、ぼたんの肩をベットへと押しつけた。
そのまま、唇を合わせる。
最初は、合わせるだけの口づけ。
そのまま、ぼたんの唇を舐めるようにすれば、自然とぼたんの口が開いた。
その瞬間を見逃すことなく、俺はぼたんの舌に自分の舌をからめた。
ぼたんの吐息。
すべてを自分の物にしたいと心から思った。
酸素を求めるように、ぼたんが口を開けば、それすら許さないと言うように、舌を絡める。
ぼたんにも、キスしてる自覚をさせるように、わざとリップ音をつける。
胸をトントンと叩かれて、俺はやっとぼたんの唇から自分の唇を離した。
だが、すぐにでも口づけ出来る距離。
「何?」
「いきなり、何するんだい。」
先程とは違った意味で潤んだ瞳をしたぼたん。
俺は、ぼたんの下唇を甘噛みした。
「俺の居ないところで、幽助と会ってたんですよね?」
「え…蔵馬に何をあげようか、聞きに行ったから。」
「それが、許せません。だから・・・。」
クイ・・・と顎を持ち上げた。
ぼたんの耳元に自分の口を近づける。
そして囁くような声で
「お仕置きだ。」
言った瞬間に、ぼたんが震えたのを感じた。
その反応に気分を良くした俺は、耳たぶを甘噛みして、そのまま顔中にキスの雨を降らせる。
一つ一つ、丁寧に。
チュツ・・チュッ・・・と部屋に響く。
「蔵馬、ちょい…と…待って…おく…れ…よ。」
何度か胸を叩くが、言葉が出れば、そのまま口をふさぐ。
それを繰り返して、また先程と同じ距離でぼたんを見つめた。
「何?」
「明日、幽助が幻海師範の所に夜に集合って言ってたよ。」
「…やはりね。」
俺は名残おしくも、最後にぼたんの唇にキスを一つ落とすと、起きあがった。
はぁ。
幽助も、最後まで気を利かしてくれれば良いものを。
あからさまのため息に、チラリとぼたんの事を見つめた。
「いいですよ。俺も学校が終わり次第、幻海師範の所に向かいますから。」
「うん。私も仕事が終わったら、いくからさ。」
体を起こしたぼたん。
気の緩んだ瞬間に、またぼたんを押し倒した。
何の抵抗もなく、再びベットへと倒れるぼたん。
少しだけ首もとを開くと、先程とは違う強さで首筋にキスを一つ。
「んっ・・・。」
ぼたんの声に、俺はクスリと笑みを浮かべた。
最後にペロリとその箇所を舐めれば・・・赤い花が花開いた。
ぼたんをはさみこむように、両腕をついた。
「ぼたん…俺は、貴方を大事にしたいんです。」
「うん。」
「でも、本当は…貴方を誰にも会わせず、閉じこめおきたい。俺だけを見ていて欲しいと
思う俺もいます。酷い事をして、ぼたんを俺から離れさせないようにって、何度も考えて
ました。」
「蔵馬は、そんな事しないよ。」
トンっと、ぼたんが蔵馬の額に指を置いた。
その指からは、ほんわか暖かい、ぼたんの霊気が流れ込んでくる。
俺はその手を取り、自分の頬へと持って行った。
「ぼたん…どうしようもないくらい、好きなんだ。」
「私も、大好きだよ。だから、そんな顔しないでおくれよ。」
「ぼたん…俺だけを見て。俺だけを考えて。俺だけの物になって。」
フワリ・・・。
何が起こったのか分からなかった。
俺は思考が止まってしまったかのようにぼたんを見つめた。
ゆっくりとぼたんの顔が俺から離れる。
桃色の瞳が、再び俺を映した。
ぼたんからキスされた。
初めて。
俺は唖然として、ぼたんを見つめてしまった。
「もう、あんただけの物だよ。」
「いいんですか?逃げるなら、今ですよ?」
「逃げないよ。蔵馬が、私に酷い事なんて絶対にしないさ。伊達に、生きてないよ。」
「もう、止められなくなりますよ?」
「止めないでおくれ。」
ぼたんは、俺の首へと腕を巻き付いてきた。
何よりも甘美な誘惑。
俺は、そのままぼたんへと、なだれ込んだ。
再びキスの嵐。
だが、先程と違うのは・・・
俺のキスに、ぼたんが答えてくれてる事。
ギュッっとぼたんを抱きしめると、耳元へとまた口をもっていく。
「優しくします。」
「お手柔らかに頼むよ。」
クスリと妖艶に笑うぼたん。
今まで見た事のない、「女の香」を匂わせる。
俺がぼたんを捕まえたんじゃない。
俺が、ぼたんに捕らわれたんだと
・・・その時、思った。
二人だけの熱い夜は、まだ長く続く・・・。