『 遙 か な る 蒼 天 〜 過 去 編 〜 第 一 章 出 会 い・ギ ン 編 』
1
「ギン・・・。」
小さな金髪の女の子が自分の袖を強く握りしめる。
ギンと呼ばれた銀色の髪の少年は、少女を自分の背へと隠した。
眼前に見えるは、大きな怪物。
胸の真ん中に気持ちが悪い程の、大きな穴を開けた生き物。
時折、見かけるその生き物は、手当たり次第に周りの人たちを食べていく。
文字通り、今も仲間がその生き物に捕まっていた。
それを見て、ギンは少女の手を取って走り出した。
少女も必死にギンについて行くが、ギンの早さには叶わない。
足がもつれそうになるのを必死に耐えて、ひたすらに走った。
ギンが物陰を見つけると、少女をその中に押し込み、外の様子を見つめていた。
「ッチ。」
ギンは突然に少女を振り返った。
ニッコリとした笑み。
「乱菊、ボクを見るんや。」
「ん?」
乱菊と呼ばれる少女は、ジッとギンの細めた目を見つめた。
ニッコリとさらに笑みを深くすると、ギンは乱菊の耳にふわりと自分の手をあてた。
その途端に、外の声が聞こえなくなった。
「ギン?」
何も言わないギン。
ただただ微笑んでいるだけだった。
だが、乱菊の聞こえていない外界では・・・
『ギャアアアア!!』
先程まで仲間と思っていた子供達の断末魔。
気持ち悪い生き物が、仲間を食べて行く音。
何も聞こえていない乱菊に、ギンは口を開いた。
「 」
「え?ギン、なんて言ったの?聞こえないよ。」
笑みを深くしたギンの後ろに、巨大な生き物が顔を覗かせた。
その瞬間に、乱菊は目を見開いた。
ドンっ!と乱菊をさらに奧へと押し込むと、ギンは物陰から走り出た。
巨大な生き物は、乱菊に目を向ける事もなく、ギンの後を追いかけて行ってしまった。
しばらくして、辺り一帯は静かになった。
「ギン・・・?」
乱菊の小さな投げかけに・・・
答えるギンの姿はなく
ただ、その場に一人ぼっちになっていた。
「ギン、置いてかないで。」
乱菊はその場に、膝を抱えて座り込み、泣き出してしまった。
後書き 〜 言い訳 〜
ここまで読んで下さり
心より深くお礼申し上げます。
文章表現・誤字脱字などございましたら
深くお詫び申し上げます。
掲載 2011.02.16
制作/吹 雪 冬 牙
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