『 高 見 を 目 指 し て 2 』
今日から青学の一年生。
朝早くから毎日しているトレーニングを終わらせたは、リョーマと共に学校へと足を向けた。
ここはかつてリョーマの父との父が卒業した母校。
スポーツが格別に能力が高い事で有名なのだ。
そして、特にテニス部は全国クラスであると言う。
リョーマとはクラス編成の紙を一緒に見上げた。
「「あ。」」
ほぼ同時に声を上げた。
それもそのはず。
リョーマとは見事クラスが同じであったからだ。
チラリと見るリョーマにはニッコリと笑った。
「なんかずーっと一緒だね。」
にとっては何げない一言。
だが、リョーマにとってはとてつもなく重い一言だった。
二人して教室に行くと、可愛いと言う看板を背負ったような子がリョーマに話しかけてきた。
「リョーマ・・・くん・・・。同じクラスだね。」
「ふーん、そう。」
ふーんそう・・・ってねぇ。
は苦笑を浮かべた。
どう見てもそんな応対したら泣いちゃいそうな可愛い女の子相手に・・・。
が目でそんな事を訴えてリョーマを見つめる。
しかしリョーマは我カンせず、窓の外を眺めていた。
ったく。
が呆れた溜め息をつくと、ばっちし彼女と目が合ってしまった。
何やら聞きたそうな感じ。
そんな眼差しで一発でわかってしまった。
この子、リョーマの事好きなんだと。
はニッコリ笑うと、彼女に手を差し出した。
「私、。訳あって越前君の家に居候してるの。よろしくね。」
「あ、じゃおばぁーちゃんが言ってた人ってあなただったのね。」
「おばーちゃん?」
「うん。男テニの顧問してるの。」
それを聞いてリョーマも私も同時に彼女の事を見た。
ってことは・・・。
なにげにリョーマと視線をからめてしまう。
そして私は勢い良くその子の事を見つめてしまった。
「
竜崎ばーちゃんって男テニ専門なの!?
」
「う・・・うん・・・。」
なんてことだろう・・・。
は拳に力を込めた。
はめられた。
しかも見事にあの鬼畜親父にはめられた・・・。
ワナワナと怒り出すオーラに、可愛い彼女はオロオロするばかりだった。
「
あんのクソ親父ぃ!!!!!
」
周りを見る余裕もなく、叫ぶ。
そこにいた誰もが驚き教室が静まり返った。
それもそうだろう。
の美貌はすでに噂の的になっていた。
本人は全く自覚症状がないのだが。
だが、そんな彼女から出た言葉が・・・あまりにも夢をぶち壊すには早かった。
ふとそんな状況に気が付いた。
周りを見渡してももう、遅い。
「あ・・・あはははは。ごめん、驚かした?えっと、で名前は竜崎、何さんだっけ?」
「桜乃。竜崎桜乃って言うの。よろしくね、さん。」
天使の笑み・・・それはこの子事を言うのだろう。
つい護って上げたくなる感じだ。
はニッコリと笑みを作ると桜乃の手を握った。
華奢な手・・・。
やっぱり女の子はこうでないとねぇ。
そう感慨にふけっていた時である。
校内放送が流れる。
しかし今日入学したばかりのには関係ない事だろうと、続けて桜乃と話し続けようとした時であった。
「1年のさん。竜崎先生がお呼びです。至急職員室に来て下さい。」
げ・・・。
なんで入学早々呼び出しなのよ・・・。
チラリとリョーマを見ても。やはり我カンせず。
ったく。
は諦めて肩を落としながら教室を出て行った。
トボトボとながーい廊下を歩く
家に帰ったら、どう父親に文句を言ってやろうかと画策しているところだった。
曲がり角から突然現れた男子。
向こうは思いっきり走り込んでいたのか、衝突を避ける為には驚いて体を横に引いた。
その反動で、走っていた男子はものの見事に廊下に倒れた。
が・・・。
「よ・・・っと!」
片手をついて軽く反転する。
その運動能力と反射神経の良さにはしばし、見つめてしまった。
さすがは名門・・・と納得。
脇の髪がくるんとカールしている彼は、どことなく人なっつこさを感じてしまう。
「ごめんにゃー、ケガないかな?」
心配そうに顔を覗き込んで来る彼には慌てて笑顔を作った。
どうみても1年ではない。
上級生だろう。
「大丈夫です。」
そう言うとスッと後ろから肩の上に手を置かれた。
驚いて数歩下がると、満面の笑みを浮かべたまた新たな男子が現れた。
「英二が注意してないからいけないんだよ。ごめんね、連れが馬鹿で。」
ニッコリ笑っていても言う言葉が凄い。
ぐっさりとささった英二と呼ばれるお友達は、壁に手を欠けて泣いている。
どうしたものかとは交互に見やり苦笑した。
「ところでさ、君って何かしてた?」
突然聞かれては言葉につまった。
あまりにも整った顔ダチの先輩。
マジかで見られれば顔だって赤くなる。
しかし・・・こう言う時に自分の性格を呪ってしまう。
「なんでですか?」
もっと可愛らしい応対は出来ないのかぁ〜と心の中で叫んでも遅い。
まぁ、見ず知らずの人間に自分の事を話す事もないか
・・・とすぐに後天的に考えるあたりが
・・・お父さんの娘だよなぁっと思う瞬間。
でもその先輩は笑顔を絶やす事無く、を見つめた。
「おやおや、質問を質問で返されるとは・・・手強いな。さん。」
「へ?」
真抜けた応対だと我ながら思う。
こんな綺麗な人知らない。
仮に合っていても、忘れる事なんてない。
こんだけ整った容姿なんてそうそういないもの。
だまって先輩を見つめ返すと、またクスリと笑った。
「その名札。それにさっき放送かかってたし。」
「あ・・・。」
なるほどね。
はやっと警戒を解いて軽く溜め息を零した。
すると突然、先程まで後ろで泣いていた英二と呼ばれる先輩が、の背中から抱きしめたのである。
「にゃーんだ!じゃあとで一緒になるんじゃにゃいか!!俺、菊丸英二だよーん。よろしくね、ちゃん!」
「え?!」
産まれてこの方、自慢ではないが男の人に触れられた事はない。
ましてこんな事・・・。
ゆでタコのように赤くなった。
それを見て益々調子に乗る菊丸に、今まで笑顔だった連れの瞳がすーっと見開かれた。
それは冷気を纏っていると言っても過言ではないほど。
「英二、いい加減やめたら?さんがいやがってるのわからないかな?」
「え?!そ、そんな事ないよにゃー?」
私にふらないでくれ・・・。
なにも言えず固まって閉まっている。
そんなと菊丸を手際よく離す。
「うわぁ!ちゃーん!!!」
「俺は不二周助。またね、さん。」
そう言うと不二先輩は菊丸先輩の首根っこを捕まえて、先程と同じ笑みを浮かべながら去って行った。
引き面れる形の菊丸先輩は「ちゃーん」等と大声で叫びまくっている。
漫才コンビのようだ。
しかし・・・。
はふと不二先輩の後ろ姿を見つめた。
あの人・・・油断出来ない人だ。
暫く見つめていた。
そんなをさらに見つめている親衛隊の存在など気付かずに、はそのまま職員室へと向かった。
扉を開けようとしたと同時に、中から運良く扉が開いた。
目の前に出来た影。
はゆっくりと視線を上げた。
眼鏡をかけた真面目そうな生徒・・・あれ?どっかで。
が固まっていると、その生徒はすぐに道を開けてくれた。
「新入生だな?何か用事か?」
先生のような口調。
はマジマジと見て、ふと頭に思い浮かんだ。
「生徒会長!」
思わず口に出してしまった。
「そうだが。」
律儀に返事をする会長。
はあわてて口を抑えた。
その時である。
中から聞き覚えのある声が聞こえた。
「おお、来たか。手塚、丁度いい。戻って来い。」
そう言われて、手塚先輩とは職員室へ入る。
ジャージ姿の竜崎ばーちゃんを前にする。
するとばーちゃんは、ニヤリと勝ち気な笑みを浮かべた。
「久しぶりだねぇ、。京四郎は元気かい?」
「はい。」
「手塚、こいつがさっき話しただ。女テニじゃこいつが可哀想だからな、今日からマネージャー権プレイヤーで一緒に練習するからな。」
竜崎先生の言葉で手塚先輩はの事を見下ろした。
その冷たい視線に一瞬飲み込まれそうになる。
なんか・・・似てる。
本気になったお父さんに。
「俺は部長の手塚だ。何かわからない事があったら聞いてくれ。さっそく今日から出てもらうが・・・ジャージはあるか?」
「はい。リョーマに言われてましたから。」
その言葉に手塚先輩は怪訝そうな顔をした。
竜崎はなるほどねぇと納得している。
訳がわからない手塚は竜崎の事を見た。
「もう一人の天才、越前リョーマだよ。こいつ、リョーマの家に居候してるんだ。」
「そうだったのか。なら越前も出れるんだな。」
が頷くと手塚は分かったとだけ言い残し職員室を後にしてしまった。
しかし・・・似てる。
て・・・な前に!!!
はダン!と机を叩いた。
「ばーちゃん!男テニでやるなんて聞いてない!!」
「そりゃそうだろうよ、言ってないんだからね。それに私はテニスの顧問と言っただけだぞ?
女テニの顧問とも男テニとも言ってないじゃいか。勝手にお前が思い込んだだろう?」
この期に及んで・・・そうくる!?
はグッと怒りを押さえ込み、竜崎の事を睨んだ。
竜崎としてはそんな怖くないと言いたげに、ニヤリと笑みを浮かべている。
さすがは、あの難癖のあるお父さん達を指導してきた恩師だけある。
ただ者じゃない。
は深い溜め息を零した。
これ以上、何を言っても無駄のような気がした。
「それに女テニなんて、物足りないだろうよ。まぁ、見てみればわかるがね。」
「・・・ま、いいか。」
強くなりたいし。
それはばーちゃんもよく知ってることだからな。
はそのまま竜崎に背を向けて職員室を出て行った。
それから教室に戻ったであったが、心ここにあらず。
今後の説明している担任の声すら入っていないようであった。
そんなを横目で気にしていたリョーマ。
それにまで気付かないであった。
つづく
後書き 〜 言い訳 〜
ここまで読んで下さり
心より深くお礼申し上げます。
よろしければ、続きもご覧下さいますと
幸いです。
文章表現・誤字脱字などございましたら
深くお詫び申し上げます。
執筆日 2010.11.22
制作/吹 雪 冬 牙
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