『 高 見 を 目 指 し て  3』

放課後。
テニスコートにリョーマと二人で出た。
しかし、そこでは意外な再会が待っていた。

「あー!!貴様!!!!」

そう指さしてきた二人の男。
はキョトンとしてしまい、リョーマは我カンせず。
何事かとコート内が雑然とした。

「女!一年だったのか!!!!」

ふと男を見て、を見つめるリョーマ。

「誰?」
「さぁ?」

本当に分からないと言う感じでとリョーマは何事もなかったかのように
その場を後にしようとしたときだった。

「待てよ!」

がっちりと腕を捕まれた
チラリとリョーマも腕に視線を送った。

「・・・なんですか、先輩。」

感情の灯らない口調。
案の定、の顔は無表情になっていた。
だまって腕を見つめる。
しかし、先輩はの腕を動かす事は出来なかった。

「腕・・・痛いんですけど。」





動かない・・・。





そう先輩の顔に書いてある。
額に汗を出す先輩に、はふっと力を抜いた。
その瞬間。
先輩はものの見事にバランスを崩してしまった。
の前で無惨にも転ぶ先輩。
またもや見下ろす形となった
しばらく睨み合いが続いていた。
そんな時である。

「おーい、おまえら何してんの?」
「も、桃!!」

桃と呼ばれる先輩がコートに入って来た。
この人達とは違うジャージを身につけている。
元気そうな人・・・それが第一印象だ。

「あんま先輩風ふかしてんじゃねーよ。」
「でもよ!」
「まぁまぁ。早くいかねぇと部長に怒鳴られぜ?」

そう言うと青ざめた先輩はすぐさま部室へと走って行った。
チラリととリョーマを見る。

「俺は2年の桃城だ。桃でいいからな。ちゃんに越前。」
「え・・・私達のこと。」

知ってる知ってる。
と笑いながら去る桃先輩。
なんか・・・個性派揃いだなぁ。
部活が始まってまもなく1年は走り込みをやらされ、2年と3年はコート内で打ち込みの練習に入っていた。
突然50周と言われて完走したのは、とリョーマのみ。
しかもこの二人、何周目からか、競争のようになってしまいいつもレギュラーメンバーが出すタイムを見事に塗り替えてしまったのである。
その事実に愕然とする手塚部長。
もう走れませんと大の字に寝ているとリョーマ。
そこに笑顔の優しいお兄さん風の人が近付いて来た。

「おつかれ、俺は副部長の大石。よろしくね、二人とも。で、手塚が呼んでるだけど、歩けるかい?」
「はい。」

にっこりとした笑み。
のその表情でレギュラーメンバーほとんどの行動がとまった。
それを横目で見るリョーマ。

「え・・・。」

なんでとまったのかわからないはオロオロとしてリョーマと他の部員の事を見ていた。
リョーマは軽く溜め息を零すと、の腕を引っ張り部長の元へと歩く。
引きずられるようにも歩き出した。
手塚部長は先程合ったよりも、数段怖さを増していた。
絶対的な尊厳と威圧感がある。
さすがは名門。
もうそれしかの頭には思い浮かばなかった。

、越前。ダブルスの試合だ。相手は・・・。」

そう言って差した先には、ニヤケ顔の先輩。


・・・はジッと睨み付けた。




何を言ったのか、部長はこっちが悪いと思っているようだった。
そんな所にリョーマの声が響いた。

「別にいいんじゃない。今のウチに叩きのめした方が楽だし。」

そう言うとリョーマはラケットを取りにベンチへと行く。



だが・・・





そこに置いてあったはずのとリョーマのラケットがなくなっていた。
一瞬下を向いたリョーマ。
ギュッと拳を握りしめた。
後から遅れて来たも、その状況を見て・・・瞬間的にニヤ付いている先輩に視線を向けた。


わざとだ。

「いるんだよね、弱い奴に限ってこういう姑息な手遣う奴。」
「いるんだよねぇ。」

リョーマとの視線がからむと、ニッと笑みを浮かべた。
その場に置かれているガットですらもビローンとしてる古い代物。
よくこんなものを見つめてきたなと感心してしまう程のレアものである。

「こっちの方がまだマシっぽい。」

そう言ってに手渡すと、も少し驚いたようにガットを見つめている。

こっちがマシと言うことは・・・。

はチラリとリョーマのラケットを見つめた。
真ん中に穴が開いている。





はぁ・・・。




「リョーマ、私こういう事する人容赦しないだけど?」
「ふーん、いいんじゃない?」





よし。





とリョーマは互いのラケットを軽く当てた。
カツンとなるラケット。
二人は何も言わずにコートへと入った。
違うコートで練習をしていたレギュラー陣が手を止めた。
二人の試合に興味があるのだ。
その時、不二が二人のラケットに異変を感じた。

「あのラケット・・・。」

そう言うと不二は、自分の相手をしているペアに二三話しをすると部室の方へと消えて行った。










さすがに達の試合は、押され気味だった。
1セットゲームと言われても、全然飛ばないラケット。
何もかもことごとく威力がない。
しかし、二人は文句一つ言わずに試合を運んでいた。
手塚も黙って見つめていた。
本来なら止めに入る所だったのだが、後から来た竜崎に止められたのだ。
まずは見ろ・・・と言われて。
話しにならない。
それが正直な感想であった。
が・・・。

「「 成る程ね、わかった。」」

ほぼ同時に二人の声が揃う。
ニヤリと不敵な笑みを浮かべてがサービスラインに立った。

「リョーマ、Are you ready?」
「Yes!」


バシュッ!!!


先程までとは打って変わったボールの速さ。
信じられない感じで誰もがを見つめた。

第二球目・・・。

が軽くサーブを入れる。
「ラッキー!」と叫びながらラリーを始める先輩だったが・・・。
レギュラー陣は違っていた。

「あれ・・・わざとだね。」
「んにゃ。」

青学のゴールデンペアとして有名な大石と菊丸が真剣な表情で二人を見つめる。
しかし次の瞬間。
浮いたボールを見事にスマッシュする越前の姿。

「「 っしゃ!! 」」

二人してガッツポーズを取る仕草。
竜崎はニヤリと笑った。
数年前の・・・あの南次郎と京四郎ペアを思い出す。
いや、そのまんまだ。
これから青学は強くなる。
そう確信した。
だが、それは顧問だけでない。
部員の誰もが・・・特にレギュラー陣は深く思ったに違いない。
試合は直ぐに終わった。
とリョーマの圧勝である。

「なんで・・・こんなラケットで・・・。」
「弘法筆を選ばずってね。」

ニッコリとしながら不二先輩がとリョーマのラケットを手に戻ってきた。
はい・・・と二人に手渡されたラケット。

「ロッカーの後ろに落ちてたよ。」
「ありがとうございます、不二先輩。」
「いえいえ。」

そんなさわやかな会話。
だが・・・その後ろでレギュラー陣は冷や汗をかいていた。
不二はもっと前にラケットを見つけていた。
だが、試合が終わるのを見計らって部室から出てきた。
さもや今まで探していました・・・と言うような素振りで。
だが、みんなは知っている。
それがわざとであったことに。



つづく

後書き 〜 言い訳 〜
 
 
ここまで読んで下さり
心より深くお礼申し上げます。
 
よろしければ、続きもご覧下さいますと
幸いです。
 
文章表現・誤字脱字などございましたら
深くお詫び申し上げます。
 

執筆日 2010.11.27
制作/吹 雪 冬 牙


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