『 も う 一 つ の 話 し 〜第一章 出会い 完〜 』
蘭は目を見開いた。
目の前の怪盗キッド・・・。
あの少年に面影が似てなくもない・・・。
まさか・・・まさかよね・・・?
「か・・・快・・・斗・・・?」
恐る恐る言葉にする、忘れる事が出来ない名前。
一緒に遊べたのはたった一度だけ。
8年前までは有希子から一輪の薔薇が、時々届けられた。
「赤薔薇の王子様からよ♪」と言うからかいの言葉と。
ふてくされたように横目でその薔薇を見つめる工藤君の顔。
だから忘れる事がなかった。
「蘭。」
パチンと怪盗キッドが指を弾くと、白いシルクハットを着ていた怪盗キッドが・・・
普通の高校生になった。
まぎれもない・・・黒羽快斗。
あの時の蘭を救ってくれた・・・快斗、その人だった。
「あ・・・な・・・。」
「びっくりした?今日さ、俺の誕生日なんだ。」
え?
蘭は驚きのあまり、その場から動けなかった。
快斗は蘭に近づくと、昔と同じようにニカッっと笑みを浮かべた。
小さい時と寸分も変わらない、その笑顔。
「だから、俺への誕生日プレゼント。」
「でも・・・。」
「蘭なら、秘密を共有出来るって、ずっと思っていたんだ。もし、共有したくないなら、
今すぐに下に行って、おじさんを呼んでくるといいよ。」
蘭と快斗の間に風が吹きぬけた。
蘭は手に持つ薔薇を見つめた。
そして、決心するかのように、快斗を見上げると・・・あの時の天使のような笑顔が戻って来ていた。
「久しぶりだね、快斗。」
「・・・あの・・・それって、okって・・・事?」
「だって、誕生日なんでしょう?私は何も用意してないし・・・だから、私からの誕生日プレゼントよ。
ありがたく受け取りなさい。」
フイっと顔をそらしている蘭。
それでも蘭の顔は赤いのが分かる。
快斗は嬉しくて、終始ニヤケ顔になっていた。
それから会えなかった10年分を埋めるかのように、二人は屋上で話し込んだ。
朝日が出る、その時間帯まで。
第二章へつづく
後書き 〜 言い訳 〜
こちらのシリーズは、以前にブログでお試しに掲載していた
作品になります。
ここまで読んでくださり
心より深くお礼申し上げます。
取りあえずは「出会い編」の第一章が終了しました。
いかがでしたでしょうか?
もしもあの10年前の出来事の時に、
蘭ちゃんと快斗が出会っていたら?
と言うコンセプトで書かせて頂きました。
これにこりず、次章も読んで頂けますと幸いです。
文章表現・誤字脱字などございましたら
深くお詫び申し上げます。
再掲載 2010.10.30
制作/吹 雪 冬 牙