幸 せ の 意 味 を 探 し て   
   〜 第四話 『過保護なのか、それとも? 』 〜  

「もう、本当に大丈夫だってば!」
「これ以上俺に迷惑かけられても、困るのはこちらなので。先に阻止させて頂きます。」

最近の蔵馬とぼたんの会話だ。
転校してきて、すぐに一週間の欠席したぼたん。
それほどまでに、霊体への傷の損傷は激しい物だったようだ。
何度か人間界で暮らす、ぼたんの家へと足を運んでみたが、常に留守の状態が続いていた。
それは霊界から、ぼたんが帰って来てない事を指していた。
こちらからの連絡の取りようもなく、何度か幽助の家に出向いた事もあった。
だが、幽助は「生きてるぜ。」の一言。
幽助のベットには、ぼたんの肉体が横たわっていた。
当然ながら息などしていない。
だが、特殊な霊気で守られているのか、腐ることはなかった。
あの日。
ぼたんを追って、飛影と共に駆け込んだ時。
ぼたんが、力なく壁に背をつけて座り込んでいたのを目撃した蔵馬と飛影。
その時の一瞬の心への衝撃は、お互いに持て余す程のものだった。
説明の付けられない、怒りの衝動。
蔵馬は、ぐったりとしているぼたんの口もとに手をかざした。
あの瞬間の、体に走った冷たいもの。
息をしていないとわかった瞬間に、飛影も蔵馬も一言も話す事無く、その元凶であるトイレへと迷わず向かった。
だが、近づけば、近づくほどに感じるぼたんの霊圧。
襲われている霊体のぼたんを見て、飛影の口もとが上がったのを見逃さなかった。
『最悪なバカではないか。』
飛影の小さな呟き。
そこに含まれる、微かな安堵の気を蔵馬は感じていた。
それは飛影にだけに言える事ではなく、蔵馬もぼたんの霊体を見て、安堵したのだから。
執行猶予の身。
霊界探偵の助手が、自分達の目の前で死んでしまえば、どんな疑いをかけられるか分かったもんじゃない。
だから、安心したのだ。
そう、蔵馬は安堵の気持ちに説明をつけた。
そして彼女の持つ、霊圧に興味を引かれた。
単なる水先案内人にしては、強い霊圧。
それは飛影も感じていた事なのだろうか。
蔵馬がぼたんの霊体を霊界のコエンマの所に届けていた時、飛影は幽助にぼたんの肉体を手渡していた。
そして7日間。
ぼたんは霊界から帰って来なかった。
明日には霊界に様子を見に行こうと決めていた蔵馬。
だが、その前に彼女はいとも簡単に蔵馬の前に現れた。
怪我などまるでなかったかのように、いつものような、おちゃらけた笑顔で。

「たっだいま〜♪」

なんて言いながら、現れた。
そんなぼたんの姿を見て、一瞬にして「心配」は「怒り」へと変化した。
蔵馬は傷があった肩へと視線をずらした。
それに気付いたのか、ぼたんは慌てたように肩に手を当てた。

「完全、修復したから。大丈夫だよーん。」
「誰がそんな事を聞きましたか?」

蔵馬も驚く程の、冷たい声色だった。
だが、すでに出てしまったものは、訂正は聞かない。
蔵馬は、そのままぼたんに背を向けた。
その瞬間、ぼたんのクスクスとした忍び笑いが耳に入ってきた。
何がおかしいのかと、蔵馬は背中越しにぼたんの事を睨んだ。

「何がおかしいんですか?」
「いやさ…飛影の言う通り、本当に質問で返すなぁって思ってさ!クックック。」

それのどこが面白いのか。
イマイチ理解しがたいぼたんに、呆れたようにため息をついた。
それをやっと怒りと理解したのか。
ぼたんは、手で口もとを抑えて笑いを封印した。
本当に、あの時に感じた罪悪感とも言える、責任感のような感情。
その後のぼたんへの関心。
全てに苛立ちを覚える。
蔵馬はこれ以上自分の感情に支配されない為に、ぼたんから離れる事を決めた。

「ありがと。」

小さな、小さな声。
でも、聞き逃す事が出来ない声。
蔵馬は驚いて足を止めた。
ゆっくりとぼたんが蔵馬の背に近づいてくる。
それを感じながらも、蔵馬は振り向く事はしなかった。
ピタリと蔵馬の真後ろに立った、ぼたん。
蔵馬の背中に、そっと手を当てた。

「ありがとう、あの子を助けてくれて。」

感謝の言葉は、自分を助けた物ではなく、あの小さな魂への物。
呆れる程のぼたんの言動に、不思議と先程まであった苛立ちが一瞬にして消えている事に気付いた。
苦笑にも似た、その笑みを浮かべると蔵馬はやっとぼたんの目を見る事が出来た。

「・・・本当に、貴方と言う人は。」
「?」
「初めて会った時から思ってましたけど…。」

呆れたような口調で言う蔵馬に、ぼたんもさすがに身構えた。
絶対に何か嫌な事を言われる。
ぎゅっと拳を握り込んで、いつでも殴れる姿勢のぼたん。
とは言え、そんなぼたんの拳なんて、蔵馬からすれば避ける避けないレベルの話しではないのだが。

「なんだい?」
「もう少し自分の立場を自覚した方がいいですよ。」
「立場?」

意味がわからないと言うように、ぼたんは首を傾げた。
蔵馬は軽く肩を諫めた。
初めて会ったあの時も、必死に幽助を守ろうとしていた。
そんな彼女を遠くから見て、攻撃する気にはならなかった。
いや、なれなかった。
彼女の独特なオーラがそうさせるのだろうか?

「もう、遅いですし。送ります。」
「いいよ、別に。その辺の女の子とは違うんだから。」
「だからです。」

『 違う 』と言う事を自覚して欲しい。
そう言っているのだが、どうもぼたんの思考回路には届かなかったようだ。
そして、次の日から蔵馬が朝、ぼたんの家へと向かえに来るようになった。
最初のうちは「仲良くなれた」と嬉しく思っていたぼたんだったが・・・
日が経つに連れて、登下校、どこに行くのにも付いて来られる、まるで監視されてるような感覚になっていった。
それから、ぼたんは蔵馬の送り迎えを断るようになったのだ。
蔵馬が傍にいる事によって、何故か男子がぼたんに近づかなくなってしまった。
と言うよりも、クラス全体的に近寄って来なくなったのだ。
それがぼたんにとっては何よりも苦痛だった。
せっかく、友達になれた同世代のクラスメイト。
それを蔵馬と言う存在一つで、潰されたくなかった。

「だから、大丈夫だって言ってるじゃないか!さっさと部活に行っておいでよ!」
「それなら先輩達にしばらくは休むと言ってありますから、ご心配なく。」
「今日は、みんなで駅前のハンバーガーを食べに行くんだよ!」
「どこのみんなですか?」

ぼたんが振り返ると、昼休みに一緒に行こうと約束していた女子達の姿がない。
えー!!っとぼたんは、辺りを見てもいない。
ぼたんはすぐに窓際によって、下を見つめた。
見れば下駄箱から出て来た友達がいるではないか。

「ちょいと!私を置いて行かないでおくれよー!!」
「ぼたんは、南野君と用事があるんでしょー。ダメだよ、約束忘れたら!明日ねー!」
「はぁ!?誰が用事があるなんて言ったのさっ!」
「え?」

そう言うと、下にした女子達はぼたんの隣から顔を出している蔵馬へと視線を向けた。
そして黙って指で差した。
ぼたんは、ゆっくりと蔵馬の事を見た。

「誰が、いつ、あんたと用事があるって言ったんだい!?」
「みなさん、すみません。彼女、忘れっぽいみたいで。」

にっこりと穏やかな笑みを浮かべて、蔵馬は下の女子へと言葉を投げた。
よくよく考えれば。
なんで、こんなにも蔵馬とぼたんの仲良いと公認のようになってるのか。
あんなに他人行儀だったハズなのに。

「くらっ」
「おっと。」

蔵馬と口にしかけたぼたんの口を、蔵馬は慌てて手で塞いだ。
蔵馬の香りが、鼻を掠めて、ほんのりぼたんの顔が赤くなった。
ぼたんの耳に口を近づけた蔵馬は、囁くように

「この場で蔵馬って名前だしたら・・・殺しますよ?」

最後には、ニッコリとした特大級の笑顔付き。
一瞬の殺気にも似た妖気に、ぼたんは慌てて何度も頷いた。
それを見て満足した蔵馬は、何事もなかったかのように手を外した。

「お前等、本当に仲良いよなぁ〜。」
「いくら昔馴染みだって言っても、あんまし見せつけるなよ〜。」

は!?
昔馴染み!?
いつから、そうなった???
ぼたんが驚いたように蔵馬を見れば、蔵馬の手の中に小さな小瓶が一つ。

「記憶を操作する、魔界の植物ですよ。」

悪びれる様子もなく、蔵馬はニッコリと微笑む。
他人から見れば、微笑んでいるように見えるのだろう。
だが、ぼたんからしてみればその笑みは「悪魔の笑み」に他ならない。

「7日もあれば、この学校くらい簡単ですよ。」
「なっ…なっ…なっ…。」

簡単ですよ…って。
簡単って…。
蔵馬がサラっと言った爆弾発言にも似た言葉に、ぼたんは言葉を失った。
蔵馬は惚けてるぼたんの脇を通りぬけて、自分とぼたんのカバンを手に持つと、教室の入り口で振り返った。

「何してるんですか?帰りますよ。」

さも当然と言うような蔵馬の言葉に、さすがのぼたんも意味が分からずに、堪忍袋の緒が切れた。
蔵馬の手から自分のカバンを奪うよぅに、取り上げると走り出した。
しかし、蔵馬が追ってくる気配はない。
ともかく。
ぼたんは、靴を履き替えるとそのまま全速力で一人の人物の元へと走り出した。
そんなぼたんの背中を見ながら、蔵馬は不敵な笑みを浮かべているだけだった。







さすがに蔵馬を言いくるめる事が出来ないと悟ったぼたんは、唯一の味方と信じている幽助の元へと駆け込む事にした。
だが、先程まで蔵馬の気配すらなかったと言うのに、幽助のアパートの前まで来た瞬間に、ぼたんは急激に足を止めた。

「おや、遅かったですね。」

にこやかな笑みと共にぼたんに近づく蔵馬。

「仕事ですか?」
「なっ…なっ…もう、いい加減にしておくれよ!幽〜助〜!!!!!!」

蔵馬の避けるように、ぼたんは幽助の部屋へと駆け込んだ。
自分の名前を大きな声で叫ぶな・・・そう文句を言おうと、扉を勢いよく開いた瞬間。

ガバッ!

っと何かが体にまとわりつき、一瞬何が起きてるのか理解が出来なかった。
フワリ…と香る、太陽な匂い。
水色の長い髪が、幽助の目の前で揺れる。
ぼたんに抱きつかれた。
そう幽助が理解するのに、さすがに少々の時間を要した。

「おい、コラッ、ぼたん!てめぇ、いきなり何しやがる!!」
「助けてよ、幽助!!!」
「はぁ?」
「ともかく離〜れ〜ろ〜ッ!!!!!!!」

無理矢理に引きはがそうとしても、ぼたんは幽助の首に手をしっかりと巻き付けて、絶対に離すまいと力を込めた。
当然、力を込めれば幽助の首は絞まる一方だ。
酸素の欠乏で、幽助の顔がだんだんと青くなっていく。
だが、ギュっと目を閉じて抱きついてるぼたんはそんな事、気付くはずもなかった。

「霊界探偵を殺す気ですか?」

くすくすとした笑みと共に階段に現れたのは、蔵馬だった。
幽助は驚いたように、蔵馬の事を見た。
ぼたんから話しは聞いてはいたが、本当に同じ高校に通ってるらしい。

「・・・。」

蔵馬は何も言わずに抱きついてるぼたんの背中を見つめた。
その瞬間、焦った幽助がわたわたと慌てだした。

「ぼたん!離れろってんだよ!!!」
「本当に、どうして人に迷惑をかけるのが好きなんですかね。」

言葉では、呆れたような優しさを含めたようだったが。
その声色は、幽助すらも青ざめる程。
ぼたんも同じく、その声に反応を示した途端に、腕の力が少しだけ緩んだ。
その隙を見逃す蔵馬でもなく、ヒョイッっといとも簡単に、幽助からぼたんを引き離した。
突然の酸素に幽助はむせるように、その場で咳を繰り返した。
だが、首根っこを捕まれた状態のぼたんは、諦めが悪いようにジタバタと手足を動かし、幽助へと必死に手を伸ばしていた。

むっ。

そんな必死なぼたんの表情に一瞬、幽助は顔を赤らめた。

コイツ、可愛い・・・?

そんな事が頭を過ぎったが、それを否定するように頭を大きく振るった。
ポリポリとこめかみを掻くと、扉を大きく開いた。

「ともかくてめぇら、近所迷惑になっから、さっさと入りやがれ。」
「いや〜ん、幽助ぇ〜。」
「お邪魔します。」

まるで猫のようにぼたんの首根っこを掴んだまま、蔵馬は何食わぬ顔で幽助の部屋へと足を踏み入れた。
蔵馬達の後に続いていた幽助は、暑苦しいと言うように蔵馬の手元を見た。

「蔵馬、そろそろソレ放せば?」
「そうですね。」

手を放すような素振りをしながらも、ぼたんのクィっと後へ弾いた。
当然ぼたんは、蔵馬の胸に倒れ込むような形になった。

「おっと。
今度あんな真似したら…分かりますよね?

蔵馬がとっさに支えたのだが。
何か耳元で囁くと同時に、ぼたんは氷のようにカチンっと固まってしまった。
ポンと肩に手を置くと、満足そうに蔵馬はその場に腰を降ろした。
幽助は自分のベットの上であぐらをかいて、立ちっぱなしのぼたんへと見上げた。

「何んだぁ?コイツ、立ったまま気絶してんのかよ?」
「クスクス…そのようですね。」
「蔵馬よぉ、あんましコイツに悪戯すんじゃねぇーよ。」
「いちいち反応が面白いですよね、彼女。」

本当に面白いと言うように、蔵馬はクスリと笑みを浮かべた。

「面白い・・・ねェ・・・。」





数分後、なんとか気絶から立ち直ったぼたんは、学校での経緯を幽助に説明した。
むろん、ぼたんの脇には蔵馬も居るわけで、幽助はいつからそんなに二人が仲良くなったのかと、むしろそちらに驚くばかりだった。

「・・・と言う訳なんだよ。酷いと思わないかい!?」
「7日も地上にいなくて、止めれなかった貴方の過失でしょう。」
「仕方ないだろう!?コエンマ様に謹慎させられてたんだから!!!」

あの怪我ならば、コエンマでなくても同じく大人しくさせていただろう。
コエンマの性格上「休め」とは言わずに「謹慎」と言う名文で、安静させたのだ。
それはともかく、だ。
先程の蔵馬の即答に、幽助は頭をひねった。
何故、蔵馬がそんな事をしたのか・・・と言う点だ。

「なぁ、蔵馬。なんでそんな事したんだよ。」
「俺の為ですよ。」
「まぁ・・・蔵馬の昔馴染みって事にしておけば、何かあった時でも、助けにゃなるわな。」
「ちょいと、幽助!!!それであたしゃ友達と遊びにも行けないんだよ!!」

切実な訴え。
だがそんな訴えも蔵馬の一言で粉砕させられた。

「遊びじゃないんですよ。」

それは暗に「お前、霊界探偵の助手と言う仕事で人間界にいるんだろう?」と言われてるのも同然である。
ぼたんは言葉につまり、くやしそうに幽助の事を見た。
やはり、口ではかなわに。
こうなったら、幽助に味方になってもらって、どうにかしてもらうしかないと考えたぼたんだった。
だが、そんな事で蔵馬が諦めるような男でもないのも、また事実だった。

「もう、過保護過ぎるだよ!蔵馬ってば。聞いてんのかい、幽助!」
「へぇーへぇー。」
「勘違いしないでください。邪魔な芽は早めに刈り取る主義なだけです。」

蔵馬とぼたんの平行線的な言い争い。
途中で適当に相づちを打つ幽助。
そんな言い争いを、小一時間程目の前で繰り広げられていた幽助は、あぐらをかき、半目状態で二人の事を見ていた。
なんだろうか・・・単なるイチャつきにしか見えない。
最初はからかい半分で見ていたのだが、だんだんと苛立ちにも似た感情がわき上がって行った。

「おめぇーらよぉ、イチャつくなら余所でやれ、余所で。」
「ちょいと幽助!誰がイチャついてるって言うのさ!」
「本当です。その目は節穴ですか。」

キッパリと二人で否定する所など・・・単に素直になれない男女関係にしか見えない。
勘弁してくれと、幽助は天井を見上げた。
たしかに、ぼたんの言い分も分かる。
どこに行くのも蔵馬が付いて来ると言うのは、ちょっと過保護過ぎる。
ぼたんは今までもこの霊力で過ごして来た。
それは妖怪に狙われた事だって一度や二度ではないはずだ。
実際に幽助の前でも、命を狙われた事もあった。
だが、その都度ぼたんなりに回避して来ていた。
その辺の奴らより、ぼたんは強い。
ドジな部分はあるが、それでもいざと言う時の判断力は、今までのピンチを切り抜けて来た、結果と言うものだろう。
それに。
幽助はふと、窓の外へと視線を向けた。
微かだが、それでも時折確実にその存在を主張する妖気。

飛影まで、何してんだか・・・。

姿こそ現れないが、自分の邪眼で見ているのは確かだ。
幽助は大きく息を吐き出した。

「蔵馬もよぉ、ぼたんの言う通りに過保護過ぎねぇか?」
「過保護?別に保護などしてません。」

いや。
どう見ても、守ってるようにしか見えない。
幽助は、チラリとぼたんへと今度は視線を移した。

「ぼたん。おめぇ、今まで妖怪に襲われた事あったろ?」
「まぁ〜…合ったような、なかったような…。」
「覚えてねぇのかよ。」
「いや〜嫌な事は忘れる質でね♪」

ある意味、ポジティブ思考。
だが、その答えが蔵馬の中の何かを切ったようだった。

「だから言ってるんです。前も話しましたよね?もう少し自分の立場を理解した方が良いと。貴方が幽助の助手と言うのであれば、その分襲われるリスクを背負うと、少しは自覚出来ないんですか?それとも、そこまで言わなければ、あなたの頭では理解出来ませんか?」

次々に出て来る蔵馬の言葉。
幽助は珍しい物でもみるかのように、目を見開いた。
蔵馬と言えばどちらかと言えば、物静かな方だ。
状況を見つめてる所為か、あまり言葉を口にはしない。
まぁ、飛影ほどではないが。
だが、それがこれほどまでに言葉が出て来ると言うのは・・・。

過保護決定だな。

幽助は、納得したように頷いた。

「だからと言って、ぼたんが生活出来ねぇって訳でもねぇぜ。今までもこっちで生活してたんだからよ。」
「その通り!!!」

幽助の援護射撃にぼたんもズイっと蔵馬に近づいて人差し指をたてた。
まるで「どうだ。」と言わんばかりの勢い。
蔵馬はスッ…と目を細めて幽助へと視線を向けた。

「幽助、助手の彼女に何かあった場合、俺や飛影だけでなく君も何かしらの罰を受ける事になると思いますよ。」
「はぁ!?なんで、俺がそんな事されにゃならねぇーんだよ!」
「彼女が助手と言うのであれば、貴方が上司。助手の落ち度は、上司の落ち度って良く言いますからね。コエンマにその辺りの話しを聞いてないんですか?」
「聞いてねぇよ!!!コルラァァァ、ぼたん!蔵馬の言う事も、もっともだろーが!」

一瞬にして幽助を自分の方に取り込んだ蔵馬。
ニヤリと口もとを上げた。
その瞬間を見てしまったぼたんの顔は、完全に引きつった。

蔵馬って、噂と全然違うんじゃないかい!?

絶世の美人妖怪。
妖狐だった頃は、冷徹な性格だったが・・・。
母親の件で、人の温もりを知ったと思っていたのに。
なんでこんなに意地が悪いんだろうか。

「ちょっと幽助!アンタ、どっちの味方なんだい!?」
「俺は俺の味方でぇい!!」

もっともらしい事を言う幽助。
そんな争いを霊界のモニターで見つめるコエンマとジョルジュ。
ジョルジュは、睨み付けるように画面を見つめているコエンマの事をチラリと見た。

「なんじゃい。」
「あの…本当にぼたんさんに何かあった時は、罰を与えるんですか?コエンマ様。」
「当たり前じゃろ。ワシの部下を貸してるだけだ。傷物にしようものなら…。」

コエンマの何かを企むような悪人面。

「あーして、こーして、こうやって・・・ひっひっひ!」
「うわぁ・・・根暗。」

ジョルジュは密かに汗をかき、数歩後ろへと後ずさった。
ぼたんに何かあった場合・・・。
ジョルジュは、再びモニターへと視線を向けた。
蔵馬と幽助に責め立てられているかのようなぼたんの姿。

「そんなに心配だったら、霊界探偵の助手になんかしなけりゃいーのに。」

ジョルジュの本音がぽろりと声に落ちてしまった。
ジロリと睨みを利かせるコエンマだったが、そのまま深く椅子にもたれ掛かった。
腕を組み、ジィーっとぼたんを見つめるコエンマの表情は、複雑なものだった。

「仕方なかろう。ワシの信用出来る中で、頼めるのはぼたんくらいしかおらんからな。」

コエンマからも一目置かれているぼたんの力。
だが、それ故の心配の種。
信用と心配は紙一重。
だがどうしてもこの霊界探偵の仕事だけは失敗出来ない。






二度と。







だからこそ、『ぼたん』と『幽助』に全てを託したのだから。











気に入って頂けたら、ポチッ!↓と押してやってください m(_ _)m






後書き 〜 言い訳 〜
 
ここまで読んでくださり
心より深くお礼申し上げます。



小説イメージのイラストも随時募集中です。
よろしくお願い致します。

 
文章表現・誤字脱字などございましたら
深くお詫び申し上げます。
 

掲載日 2011.06.20
吹 雪 冬 牙


    BACK   HOME     TOP    NEXT